甲骨文字→金文(きんぶん)→篆書(てんしょ)→隷書→…の順に発達した漢字。でもほかに族徽(ぞくき)というものがあり、漢字の成立に絡んでいたという。研究の最前線をのぞけるスリル満点のガイドだ。
族徽は初耳だ。どんなものか。
鼎(てい)の内側に、祖先の事績が刻んである。そこに見つかる、一族を象徴する図案風の文字が族徽。甲骨文字や金文と並行して用いられた。やはり原初漢字の一種と考えられる。
牛や象の図柄。鼎や車の図柄。子守や饗宴の図柄。文字として残ったものも残らなかったものもある。
殷王朝には青銅の工房があった。各地の支配者が注文して祭器を造ってもらった。その際族徽を刻んだのが発掘で沢山みつかっている。後代の文字資料は内容がでたらめ。当時を知るには甲骨文字や金文や族徽など一次資料にあたるのが大切だ。
古代中国は謎が多い。風俗習慣や社会制度がよくわからない。文字から判ずると、猿や蛇(龍)や鳥や…の神々を信じていた。周王朝になると、天と祖先崇拝の信仰が広まり、昔の宗教は消えてしまった。儒学の古典を読むだけでわからない古い精神世界が文字に隠されている。漢字をプリズムのように覗く楽しさだ。