書評

『漢字はこうして始まった: 族徽の世界』(早川書房)

  • 2025/05/12
漢字はこうして始まった: 族徽の世界 / 落合 淳思
漢字はこうして始まった: 族徽の世界
  • 著者:落合 淳思
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:新書(272ページ)
  • 発売日:2025-02-19
  • ISBN-10:4153400386
  • ISBN-13:978-4153400382
内容紹介:
3000年以上前、中国最古の王朝「殷」で発明され、部族固有の徽章として青銅器に鋳込まれた原初の漢字、「族徽」。きわめて象形性の高いそのデザインには、当時の社会のありさまや宗教観が生き… もっと読む
3000年以上前、中国最古の王朝「殷」で発明され、部族固有の徽章として青銅器に鋳込まれた原初の漢字、「族徽」。きわめて象形性の高いそのデザインには、当時の社会のありさまや宗教観が生き生きと写し取られている。祖王の慰霊のため斬首された殉葬者、天空を雄飛する巨龍、ウマやブタなどの家畜を監視する人々、酒宴を通して神々と交歓する王侯貴族、軍旗を掲げて敵国へと進軍する兵士たち―謎に包まれた古代社会の実態と文字の起源を、徹底的な分析で鮮やかに解き明かす。

目次
序章 古代中国の社会と族徽
第一章 動物に由来する族徽
第二章 人工物に由来する族徽
第三章 人の行為を表した族徽
第四章 文字として残らなかった族徽
終章 社会の変化と族徽の消滅
甲骨文字→金文(きんぶん)→篆書(てんしょ)→隷書→…の順に発達した漢字。でもほかに族徽(ぞくき)というものがあり、漢字の成立に絡んでいたという。研究の最前線をのぞけるスリル満点のガイドだ。

族徽は初耳だ。どんなものか。

鼎(てい)の内側に、祖先の事績が刻んである。そこに見つかる、一族を象徴する図案風の文字が族徽。甲骨文字や金文と並行して用いられた。やはり原初漢字の一種と考えられる。

牛や象の図柄。鼎や車の図柄。子守や饗宴の図柄。文字として残ったものも残らなかったものもある。

殷王朝には青銅の工房があった。各地の支配者が注文して祭器を造ってもらった。その際族徽を刻んだのが発掘で沢山みつかっている。後代の文字資料は内容がでたらめ。当時を知るには甲骨文字や金文や族徽など一次資料にあたるのが大切だ。

古代中国は謎が多い。風俗習慣や社会制度がよくわからない。文字から判ずると、猿や蛇(龍)や鳥や…の神々を信じていた。周王朝になると、天と祖先崇拝の信仰が広まり、昔の宗教は消えてしまった。儒学の古典を読むだけでわからない古い精神世界が文字に隠されている。漢字をプリズムのように覗く楽しさだ。
漢字はこうして始まった: 族徽の世界 / 落合 淳思
漢字はこうして始まった: 族徽の世界
  • 著者:落合 淳思
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:新書(272ページ)
  • 発売日:2025-02-19
  • ISBN-10:4153400386
  • ISBN-13:978-4153400382
内容紹介:
3000年以上前、中国最古の王朝「殷」で発明され、部族固有の徽章として青銅器に鋳込まれた原初の漢字、「族徽」。きわめて象形性の高いそのデザインには、当時の社会のありさまや宗教観が生き… もっと読む
3000年以上前、中国最古の王朝「殷」で発明され、部族固有の徽章として青銅器に鋳込まれた原初の漢字、「族徽」。きわめて象形性の高いそのデザインには、当時の社会のありさまや宗教観が生き生きと写し取られている。祖王の慰霊のため斬首された殉葬者、天空を雄飛する巨龍、ウマやブタなどの家畜を監視する人々、酒宴を通して神々と交歓する王侯貴族、軍旗を掲げて敵国へと進軍する兵士たち―謎に包まれた古代社会の実態と文字の起源を、徹底的な分析で鮮やかに解き明かす。

目次
序章 古代中国の社会と族徽
第一章 動物に由来する族徽
第二章 人工物に由来する族徽
第三章 人の行為を表した族徽
第四章 文字として残らなかった族徽
終章 社会の変化と族徽の消滅

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年3月22日

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