書評

『「スーパー名医」が医療を壊す』(祥伝社)

  • 2024/02/08
「スーパー名医」が医療を壊す / 村田 幸生
「スーパー名医」が医療を壊す
  • 著者:村田 幸生
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:新書(216ページ)
  • 発売日:2009-12-10
  • ISBN-10:4396111878
  • ISBN-13:978-4396111878
内容紹介:
巷間言われているところの「医療崩壊」を現場の医者の立場から論じた書。なぜ、医療ミスというわけではないのに救命できないと、すぐに医者が訴えられるのか。救急で受け入れた患者の転院に要… もっと読む
巷間言われているところの「医療崩壊」を現場の医者の立場から論じた書。
なぜ、医療ミスというわけではないのに救命できないと、すぐに医者が訴えられるのか。救急で受け入れた患者の転院に要した時間がかかり過ぎたという理由で、なぜ訴えられるのか。なぜ、医者と患者の信頼関係が、ここまで崩壊してしまったのか。医療は技術が優先か、心が優先か。こうした課題に日々直面している現場の医師が、深刻にならずに軽い語り口で世に問いかける。
その一つとして、患者の側の理想の医者像と、現実の医者との間に大きな乖離が生まれた背景に、「白い巨塔」を嚆矢とする昨今の医療ドラマ、とりわけスーパー名医ものの影響があるのではないか、というのが著者の仮説で、本書では、各章ごとに人気の医療ドラマを取り上げ、そこから現代の様々な問題を考察するというスタイルをとっている。

平凡な一勤務医による「医療崩壊を止める法」とは(著者のことば)

わたしは名医ではないが、(たぶん)ヤブ医者でもない、どこにでもいる平凡な一勤務医にすぎない。だが、医療崩壊を止めることができるのは、有名な大学教授や医療評論家でもなければ、「神の手」を持つ名医でもなく、医者の大部分を占めながら特に名を知られることもなく、日々患者さんと接している普通の医者たちであると確信する。
なぜなら、患者の思いを一番近いところで見聞きし、彼らの不満不信の実態を一番よく分かっているのは、ほかならぬ現場の勤務医たちだからだ。

医師のホンネに耳を傾ける

PPK願望という言葉をご存じだろうか。ピンピンコロリ願望、つまり昔風にいえば「ぽっくり願望」と同じことの謂いである。しかし、「PPKは現実には、きわめて難しい」と、本書の著者は釘を刺す。

実際に、ある日突然親が死んでいたら、それを冷静に受け止められる家族などは殆どいまい。ましてや、それが病院で起ったとしたら、医者は訴えられる危険すらあって、「PPKはけっきょく、自宅でも病院でも『周囲をあわてさせる幕切れ』でしかないのだ」と著者は言う。

なるほどなあ。素人の俗論では問題のないように見えても、医療の現場では大問題ということがあり、本書は、その種々の実例を挙げて、テレビや漫画などの「スーパー名医もの」をもどきながら、明快に切り込んでいく。その筆致はまさに快刀乱麻を断つが如くである。

私たちは、現象面だけを見て、患者のたらい回しはケシカラン、などと言いがちだが、現実には、救急患者の最適切な治療先を探しているうちに患者が急死したというような例もあったり、簡単にひと括りにはできないところもあるのである。

そうした現実を、まさに赤裸々に描き出しながら、医者だって生身の人間だ、絵空事の「スーパー名医」のようなわけにいくものか、と、これは決して開き直りではなくて、心の叫びさながらの、已むに已まれぬ熱情を込めて訴えているのがこの本なのだ。医療従事者、官僚、政治家、そして医療の恩恵を受けている私たち、みんな一度はこういう本を読んで、よく現実を知るがいいのである。著者の土佐人らしい熱情と正義感は、ちょっとあの龍馬を彷彿とさせるところすら感じられる。


「スーパー名医」が医療を壊す / 村田 幸生
「スーパー名医」が医療を壊す
  • 著者:村田 幸生
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:新書(216ページ)
  • 発売日:2009-12-10
  • ISBN-10:4396111878
  • ISBN-13:978-4396111878
内容紹介:
巷間言われているところの「医療崩壊」を現場の医者の立場から論じた書。なぜ、医療ミスというわけではないのに救命できないと、すぐに医者が訴えられるのか。救急で受け入れた患者の転院に要… もっと読む
巷間言われているところの「医療崩壊」を現場の医者の立場から論じた書。
なぜ、医療ミスというわけではないのに救命できないと、すぐに医者が訴えられるのか。救急で受け入れた患者の転院に要した時間がかかり過ぎたという理由で、なぜ訴えられるのか。なぜ、医者と患者の信頼関係が、ここまで崩壊してしまったのか。医療は技術が優先か、心が優先か。こうした課題に日々直面している現場の医師が、深刻にならずに軽い語り口で世に問いかける。
その一つとして、患者の側の理想の医者像と、現実の医者との間に大きな乖離が生まれた背景に、「白い巨塔」を嚆矢とする昨今の医療ドラマ、とりわけスーパー名医ものの影響があるのではないか、というのが著者の仮説で、本書では、各章ごとに人気の医療ドラマを取り上げ、そこから現代の様々な問題を考察するというスタイルをとっている。

平凡な一勤務医による「医療崩壊を止める法」とは(著者のことば)

わたしは名医ではないが、(たぶん)ヤブ医者でもない、どこにでもいる平凡な一勤務医にすぎない。だが、医療崩壊を止めることができるのは、有名な大学教授や医療評論家でもなければ、「神の手」を持つ名医でもなく、医者の大部分を占めながら特に名を知られることもなく、日々患者さんと接している普通の医者たちであると確信する。
なぜなら、患者の思いを一番近いところで見聞きし、彼らの不満不信の実態を一番よく分かっているのは、ほかならぬ現場の勤務医たちだからだ。

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スミセイベストブック

スミセイベストブック 2008年20号

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