書評

『文にあたる』(亜紀書房)

  • 2025/04/16
文にあたる / 牟田 都子
文にあたる
  • 著者:牟田 都子
  • 出版社:亜紀書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
  • 発売日:2022-08-10
  • ISBN-10:4750517542
  • ISBN-13:978-4750517544
内容紹介:
《本を愛するすべての人へ》人気校正者が、書物への止まらない想い、言葉との向き合い方、仕事に取り組む意識について——思いのたけを綴った初めての本。---------------------------------… もっと読む
《本を愛するすべての人へ》

人気校正者が、書物への止まらない想い、言葉との向き合い方、仕事に取り組む意識について——思いのたけを綴った初めての本。

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〈本を読む仕事〉という天職に出会って10年と少し。
無類の本読みでもある校正者・牟田都子は、今日も原稿をくり返し読み込み、書店や図書館をぐるぐる巡り、丹念に資料と向き合う。

1冊の本ができあがるまでに大きな役割を担う校正・校閲の仕事とは? 
知られざる校正者の本の読み方、つきあい方。

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校正者にとっては百冊のうちの一冊でも、読者にとっては人生で唯一の一冊になるかもしれない。誰かにとっては無数の本の中の一冊に過ぎないとしても、べつの誰かにとっては、かけがえのない一冊なのだ。

「事実」と「誤り」の間を読み込み悩み抜く仕事

何年も前、自分の原稿の中にあったタレントのRIKACOの表記がRICAKOになっていることを校正者が指摘してくれた。日頃、彼女のスペルについて、そこまで考えていない。

先日、「代々木公園の端っこには、代々木ポニー公園がある」と書いたら、校正者から疑問が出た。代々木公園は都立、代々木ポニー公園は区立の施設、この表現だと同じ敷地内で運営されているように読めてしまうとのことだった。

毎日のように校正者に向かってお辞儀をしたくなるのだが、校正者と直接向き合うことはほとんどない。本や雑誌が出版される前のゲラ(校正刷り)を読み、言葉の誤りや事実関係の確認をしてくれるのだが、すべてはそのゲラを通してのやり取りとなる。

校正者としての想い、心得、悩みなどを綴(つづ)った一冊を読み、ゲラに文字を書き入れるまでの葛藤を知る。「校正とははたしてすべてを『事実』に即して正すべき仕事なのでしょうか」とある。文芸とサブカルとジャーナリズムと理系では、それぞれ「事実」が異なる。たとえば、「すっかり心臓は止まっていたが、彼は元気満々に歩いた」という文章があったとして、それをいかに「事実」とするかは難しい。

そこにある言葉を見極めるためには事実以外の尺度も必要で、紙を通じたコミュニケーションを繰り返していく。一度印刷されてしまえば、もう元には戻せない。なぜこの誤植を見逃したのかと、うろたえたことのない校正者・編集者・書き手は誰一人としていない。「完璧な仕事をすることなど不可能だと知りながら、次こそはと心に誓い新たなゲラに向かう」。

同じ気持ちだ。熱量が注ぎ込まれたゲラを眺めて、精一杯の熱量で返すのが好きなのだ。
文にあたる / 牟田 都子
文にあたる
  • 著者:牟田 都子
  • 出版社:亜紀書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(256ページ)
  • 発売日:2022-08-10
  • ISBN-10:4750517542
  • ISBN-13:978-4750517544
内容紹介:
《本を愛するすべての人へ》人気校正者が、書物への止まらない想い、言葉との向き合い方、仕事に取り組む意識について——思いのたけを綴った初めての本。---------------------------------… もっと読む
《本を愛するすべての人へ》

人気校正者が、書物への止まらない想い、言葉との向き合い方、仕事に取り組む意識について——思いのたけを綴った初めての本。

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〈本を読む仕事〉という天職に出会って10年と少し。
無類の本読みでもある校正者・牟田都子は、今日も原稿をくり返し読み込み、書店や図書館をぐるぐる巡り、丹念に資料と向き合う。

1冊の本ができあがるまでに大きな役割を担う校正・校閲の仕事とは? 
知られざる校正者の本の読み方、つきあい方。

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校正者にとっては百冊のうちの一冊でも、読者にとっては人生で唯一の一冊になるかもしれない。誰かにとっては無数の本の中の一冊に過ぎないとしても、べつの誰かにとっては、かけがえのない一冊なのだ。

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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2022年9月11日号

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