書評
『我々の恋愛』(講談社)
回りくどく不器用な男女
いとうせいこう、渾身の長篇は、世界中の「恋愛学者」が山梨に集まって開いた「二十世紀の恋愛を振り返る十五ヵ国会議」が舞台。名だたる学者たちが選んだ「二十世紀最高の恋愛」は……まあなんとも、地味な、日本の片隅に住んでいる男女の不器用な恋愛だった。東京の大型遊園地「あらはばきランド」に勤める華島徹と、群馬県桐生市でパン製造の会社に勤めつつ新しい酵母の開発にいそしむ遠野美和――二人が出会うきっかけは、美和が徹に間違い電話をかけたことだった。
ジリジリするほど回りくどい彼らの恋愛はしかし、そのたとたどしさ、コミュニケーションの不全ぶりにおいて、日本語でこれまで書かれた小説とは異質な読後感を残す。
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