『終りの日々』(みすず書房)
陣野 俊史
階段で倒れているところを見つけられたときには、息はもう無かった。
外傷も見当たらず、おそらく心臓発作によるものらしい。
部屋に遺された原稿用紙の束の中に、「死後、活字にするもの」と
表紙に書かれた8冊の日記があった。
本書は最晩年の独り居のなかで、その日その日に思ったことを綴ったその日記の公刊である。
先輩作家たちはすでに無く、奇妙な友情で結ばれていた大庭みな子もこの世を去る。
朝の聖書朗読、思索、読書、執筆……ときに過ぎた日のことを思い出し、
現代の日本社会を慨嘆する。ここに遺されたのは、
日常生活の記録ではなく魂のドキュメントとでも呼ぶべき文章群である。
高橋たか子の私設秘書の役を果たした鈴木晶の解題を付す。
装幀は高橋作品を多くてがけた菊地信義。
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