書評

『公園』(河出書房新社)

  • 2026/07/16
公園 / 荻世 いをら
公園
  • 著者:荻世 いをら
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(148ページ)
  • 発売日:2006-11-17
  • ISBN-10:4309017894
  • ISBN-13:978-4309017891
内容紹介:
公園→下田→ニューヨーク、そしてグラウンドゼロ。世界の縮図・公園から始まる大学生のぼくと友人のオノサの終わりなき移動。文学的野心と冒険に満ちた衝撃の問題作。第43回文藝賞。

小説への心意気感じる作品

今年の文藝賞受賞作。著者も言うとおり、公園は不思議な場所だ。人々はいちおう一つの場に集結しているのだが、皆やっていることが違う。生活水準も服装もバラバラだ。

でも、小説は公園の不可解さにこだわるわけではない。主人公はほとんど無目的に動き回る。伊豆に、ニューヨークに、だらだらと移動するけれど、彼の姿はあたかも、公園で日向(ひなた)ぼっこする人のようだ。そこに明確な志向性はない。つまり、どこに行っても、歩き回っても、そこは「公園」というわけだ。

もちろんそんな理の勝った解釈で出来ている小説ではない。ヤクザになぜか同行したり、ニューヨークに旅行してやっとわかったことは、チベットに行きたいということだったり、など。

一つひとつのエピソードにはどこか軽妙なユーモアが漂う。それはこの作者の才気ではなくて、小説を書くうえでの決意とか、覚悟とか、そんな基本的な構えにかかわっているような気がする。

つまり、勢いに任せて小説を書いているようでいて、結構したたかに小説をコントロールしようとする意思が感じられるということだ。心意気や、よし。


公園 / 荻世 いをら
公園
  • 著者:荻世 いをら
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(148ページ)
  • 発売日:2006-11-17
  • ISBN-10:4309017894
  • ISBN-13:978-4309017891
内容紹介:
公園→下田→ニューヨーク、そしてグラウンドゼロ。世界の縮図・公園から始まる大学生のぼくと友人のオノサの終わりなき移動。文学的野心と冒険に満ちた衝撃の問題作。第43回文藝賞。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2006年12月6日

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