書評
『死にたくなったら電話して』(河出書房新社)
普通の男女が「心中」へ向かう
大学受験で3浪中の徳山は、バイト仲間に連れてゆかれたキャバクラで、山仲初美と出会う。会った瞬間からゲラゲラと笑い転げた初美は、徳山に猛アタック。2人は付き合うことに。と、物語をなんとなく説明しようとしてもこの小説の面白さはまるで伝わらない。ただ普通の男女の、あまり特徴のない日常が描かれているように思うかもしれない。
タイトルの「死にたくなったら電話して」は、初美が徳山に手渡した紙切れに書いてあった言葉であり、2人は緩やかに「心中」へと向かっていく。
初美は一貫して世界に対して厭世(えんせい)的かつ否定的な視点を崩さない。「人間なんてものがいつの世も、どの地域に生まれても、本質的にあまり変わらずに、どいつもこいつもクズばっかり」という認識を持っているのだ。
悪意や憎悪といった否定的感情がきれいな若い女性の形をして歩いているようなキャバ嬢こそ、初美なのだが、彼女との関係の中で、徳山も変化していく。
読み始めると止められない筆力は新人離れしている。別の作品も読んでみたいと素朴に思わせる。第51回文芸賞受賞作。
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