書評

『海の仙人・雉始雊』(河出書房新社)

  • 2026/04/18
海の仙人・雉始雊 / 絲山 秋子
海の仙人・雉始雊
  • 著者:絲山 秋子
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(192ページ)
  • 発売日:2023-02-04
  • ISBN-10:4309419461
  • ISBN-13:978-4309419466
内容紹介:
孤独は心の輪郭であり、人生に課せられた最低限の荷物なのだ―宝くじに当たった河野は仕事を辞め、碧い海が美しい敦賀で独り暮らしていた。ある日、居候を志願する役立たずの神様・ファンタジーが訪れ、奇妙な同居生活が始まる。孤独の殻にこもる河野だったが、彼に想いを寄せる二人の女性が訪れ…。傑作短篇「雉始〓」を文庫初収録。第55回芸術選奨文部大臣新人賞受賞作。

乾いた筆致、才能光る

絲山秋子は、会話が巧い。ちょっと巧すぎるかも。だから登場人物がかなりキテレツなやつらでも、キレのある会話を作ることができる。

彼女のデビュー作『イッツ・オンリー・トーク』を思い出して欲しい。東京の大田区は蒲田に住まう不思議な住人がこれでもかと出てきて、絶妙な会話で繋がりながら、どこか精神的・肉体的欠損を抱えていた。

だが、そうしたいわば過剰なキャラクター設定を、絲山は避けるようになってきた。人物を激しく動かして、読み手を意想外のエリアへ導く小説から、少しずつだが、人物の数を減らし、抑制された筆致へと移動してきたのだ。『海の仙人』は、ちょうど、その移動の真ん中に位置している。

冒頭、「ファンタジー」という名前の神様が現れる。ファンタジーは見える人には見える都合のいい神様で、大酒呑みで、皮肉屋。彼が選んだ主人公の男は三億円の宝くじに当たった、やる気のない青年。似たような精神の傾きを持つ女たちも集まって……、と、ここまでは多少ドタバタしているが、人物たちの勝手な動きを抑制する乾いた筆致は、彼女の天賦の才能の証しなのである。
海の仙人・雉始雊 / 絲山 秋子
海の仙人・雉始雊
  • 著者:絲山 秋子
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(192ページ)
  • 発売日:2023-02-04
  • ISBN-10:4309419461
  • ISBN-13:978-4309419466
内容紹介:
孤独は心の輪郭であり、人生に課せられた最低限の荷物なのだ―宝くじに当たった河野は仕事を辞め、碧い海が美しい敦賀で独り暮らしていた。ある日、居候を志願する役立たずの神様・ファンタジーが訪れ、奇妙な同居生活が始まる。孤独の殻にこもる河野だったが、彼に想いを寄せる二人の女性が訪れ…。傑作短篇「雉始〓」を文庫初収録。第55回芸術選奨文部大臣新人賞受賞作。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2004年10月21日

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