書評

『赤ちゃん教育』(青土社)

  • 2026/05/21
赤ちゃん教育 / 野崎 歓
赤ちゃん教育
  • 著者:野崎 歓
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(160ページ)
  • 発売日:2005-06-01
  • ISBN-10:4791761936
  • ISBN-13:978-4791761937
内容紹介:
突然赤ん坊を授かった文学教師は欣喜雀躍。だが文学などはねのける幼児のエネルギーにはたじたじ。子育ての苦労を笑いのめし、赤ちゃんと触れあう甘美な経験を悦楽にみちた文章で綴る傑作エッセイ。

生命力そのまま掬った名文

赤ん坊を育てるという行為には、何よりも自分がとうの昔に忘れてしまっている自分を想起する愉(たの)しみが付随する。特に子どもが幼稚園に入る前までのいろんな出来事って、親の自分が記憶していないことだし、かといってまったく忘れてしまっているわけでもない。そういえば、自分にもこんなことが起こったかもしれない、と感じることがある。その契機が赤ん坊によってもたらされるのだ。だが、大抵の場合、そうした契機は瞬間的な出来事であり、すぐに過去のモノとなる。第一、子どもを育てるって忙しいのだ。

著者は、フランス文学の研究者にしてエッセイの名手、あるいはジャン・ルノワールや香港映画をめぐる書物まで持つ才人だが、突如、赤ん坊を授かる。うろたえながらも、息子の挙措やカタコトの日本語を逐一記憶し、文字として定着させようとする。「パパ、だめ!」の意味の「テテないくん!」をきっかけに、アルベール・カミュへと連結するあたりなど、あまりの巧緻さに唸るのだ。

それより何より、やはり赤ちゃんの生命力である。あのポジティヴな力をそのまま掬(すく)い取った名文を堪能されたい。

赤ちゃん教育 / 野崎 歓
赤ちゃん教育
  • 著者:野崎 歓
  • 出版社:青土社
  • 装丁:単行本(160ページ)
  • 発売日:2005-06-01
  • ISBN-10:4791761936
  • ISBN-13:978-4791761937
内容紹介:
突然赤ん坊を授かった文学教師は欣喜雀躍。だが文学などはねのける幼児のエネルギーにはたじたじ。子育ての苦労を笑いのめし、赤ちゃんと触れあう甘美な経験を悦楽にみちた文章で綴る傑作エッセイ。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2005年7月21日

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