書評
『異邦の香り ネルヴァル『東方紀行』論』(講談社)
仏詩人の世界にどっぷり
ジェラール・ド・ネルヴァルは、19世紀中葉のフランスの詩人だ。大ロマン派の詩人たちに比して、やや影が薄い気もするけれど、彼の著作は読みだすとひき込まれる。読者の皆さん、ご注意あれ。コンスタンチノープルへ向かった紀行文『東方紀行』も、いきあたりばったり(にみえる)の書き方につきあっているうちに、どんどんその世界の奥へ――。本書では、ネルヴァルの『東方紀行』をフランス文学者の野崎歓が自分自身も踏み迷いながら案内してくれる。
「でまかせの漫歩ぶり」を闊達な文体で再現してみせながら、読者は野崎の漫歩ぶりにもひき込まれるのだ。東京大学での最終講義「ネルヴァルと夢の書物」も収録する。
【単行本】
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