書評
『ECDIARY』(レディメイド・インターナショナル)
現実眺めるラッパーの日記
ECDは、ラッパーだ。ラッパーは言葉を武器にすることのできる稀有な音楽をやっている人たちである。だが、たとえば、俺たちは何でも言う、言いたいことを言う、だから表現の自由は俺たちの手にある、なんて歌うラッパー連中とは、根本的に違うものをECDは抱えている。そんなお題目を唱えても仕方がない、と(たぶん)ECDは思っている。だから彼は彼の日常と地続きの現実を鋭く眺めている。自分が関わる日常がどれだけ息苦しく、自分にとってよそよそしいものであるか、この日記を読むとよくわかる。たとえばイラクでの邦人人質事件のとき、彼は「自作自演でも支持します」とBBSに書き込む。当然、2ちゃんねるでは相当ひどい書き込みがある。彼は一人で敵となるが、少しも怯(ひる)まない。
アナキストだな、と思う。ラッパーはもともとそうだったなどと言うつもりはない。いかなる権力の匂いとも無縁のありようは、どこか竹中労さえ思わせる。ヒップホップが、どんどんポップになっていく中で、ECDの存在はブキミで、貴重だ。巻末の短篇小説も興味深い。今度はもっと長い小説を読んでみたい。
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