書評

『日々の泡』(河出書房新社)

  • 2026/06/02
日々の泡 / 宮崎 誉子
日々の泡
  • 著者:宮崎 誉子
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(189ページ)
  • 発売日:2005-09-01
  • ISBN-10:4309017320
  • ISBN-13:978-4309017327
内容紹介:
時給850円(交通費なし)。こんな仕事を続けてていいのかニャー。労働&日々の汗を描く、タフなプロレタリア文学。

アルファベット・クッキー POPザウルス(A面) コーヒー・チェリー ピンクパンサー ビター・チョコレート

新プロレタリア文学誕生か

労働を書いた小説。労働について、とか、労働をめぐって書かれた小説ではない。めちゃくちゃ働いている人の内側から、労働そのものに迫ろうとした小説なのだ。

でも、凄く働いている人って、単に疲れているだけ、とか、仕事を能率よくこなすこと以外、考えていないんじゃないか、とか、いろいろ予断はある。また、労働だけを取り出すことが果たして可能なのかという疑問もある。働いている人間のつきあい、家族構成、生い立ちなど、一切を捨象して、小説は成り立つのだろうかとも思う。

だが、宮崎誉子(たかこ)は果敢に、労働だけを取り出そうとする。たとえば川端康成文学賞にノミネートされた「POPザウルス(A面)」。書店でバイトする鳥海疼良(うずら)(語り手)は、いろんなバイトの人たちと話をするけれど、彼らとの関係性が深化することはない。「この時給で平気なのかよ」と言われ、先輩のイジメにあいながらも、なぜか淡々とハッピーなのだ。それは、たぶん語り手に上昇志向がないせいだ。これはこれで幸せなのだから仕方ない。恬淡(てんたん)としたところが面白い。新・プロレタリア文学の誕生かも。


日々の泡 / 宮崎 誉子
日々の泡
  • 著者:宮崎 誉子
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(189ページ)
  • 発売日:2005-09-01
  • ISBN-10:4309017320
  • ISBN-13:978-4309017327
内容紹介:
時給850円(交通費なし)。こんな仕事を続けてていいのかニャー。労働&日々の汗を描く、タフなプロレタリア文学。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2005年10月13日

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