書評
『あしたから出版社』(筑摩書房)
会社設立の舞台裏描く
夏葉社。著者の島田潤一郎さんがひとりでやっている出版社だ。島田さんがこの会社をスタートさせたのが、2009年9月。最初の本は、バーナード・マラマッドの『レンブラントの帽子』、復刻版だった。訳者は、小島信夫、浜本武雄、井上謙治。装丁、和田誠。巻末のエッセイを荒川洋治が書いている。
名もない小さな出版社の最初の本として、すこぶる贅沢(ぜいたく)だ。ただ、私が最初に買ったのはこの本ではなく、2冊目の、関口良雄『昔日の客』という本だった。ツイッター経由で知った。
それからポツリポツリと島田さんは本を作ってきた。派手な話題になる本ではけっしてない。だが、作り手の視線を感じさせる本だ。
たったひとりで出版社をやってこれだけ面白い本が作れるのだから、趣味のいい、生活に困窮していない人なのだろうと想像していた。
まるで違った。30歳まで挫折の連続だった。大切な従兄をなくした。彼と彼の両親のために、島田さんは出したい本があった。そのために出版社を興したのだった。
心揺さぶられる文章。島田潤一郎と夏葉社、要注目。
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