書評
『『共同幻想論』に挑む ――家族人類学的考察』(筑摩書房)
著者・鹿島茂氏は律儀なひとだ。学生のころ吉本隆明『共同幻想論』が理解できなかった。後年≪エマニュエル・トッドの家族人類学≫を読み≪突如、理解可能≫になった。そこで『ちくま』に連載六八回、六百頁(ページ)超の執念の読解の書が成った。
『共同幻想論』は「幻想」の概念が独特だ。唯物論のマルクス主義の向こうを張る。返す刀で天皇制の元を断つ。執筆意図は実に明白だ。
幻想の機序を対幻想/自己幻想/共同幻想に三分し、柳田国男の『遠野物語』を素材にその力学を検証する。量子力学の実験のようだ。世界でも独自で最高水準の達成である。
マルクス、エンゲルスは人類学を援用した。モーガンの『古代社会』だ。トッドの人類学は、食糧生産など経済基盤から家族類型の変遷を追う歴史的考察。マルクス主義に対抗する『共同幻想論』の補助線にこれでよいのかと思わないでもない。
本書は『共同幻想論』を巻末から逆に読み進み、最後に元の順序で整理する。日本の歴史の、そして近代の根底にあるテーマは家族なのだ。『共同幻想論』は永く読み継ぐべき知的遺産。吉本隆明の独創的業績への深い敬意に基づく労作である。
『共同幻想論』は「幻想」の概念が独特だ。唯物論のマルクス主義の向こうを張る。返す刀で天皇制の元を断つ。執筆意図は実に明白だ。
幻想の機序を対幻想/自己幻想/共同幻想に三分し、柳田国男の『遠野物語』を素材にその力学を検証する。量子力学の実験のようだ。世界でも独自で最高水準の達成である。
マルクス、エンゲルスは人類学を援用した。モーガンの『古代社会』だ。トッドの人類学は、食糧生産など経済基盤から家族類型の変遷を追う歴史的考察。マルクス主義に対抗する『共同幻想論』の補助線にこれでよいのかと思わないでもない。
本書は『共同幻想論』を巻末から逆に読み進み、最後に元の順序で整理する。日本の歴史の、そして近代の根底にあるテーマは家族なのだ。『共同幻想論』は永く読み継ぐべき知的遺産。吉本隆明の独創的業績への深い敬意に基づく労作である。
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