書評

『小林秀雄、吉本隆明、福田恆存――日本人の「断絶」を乗り越える』(ビジネス社)

  • 2025/03/31
小林秀雄、吉本隆明、福田恆存――日本人の「断絶」を乗り越える / 浜崎 洋介
小林秀雄、吉本隆明、福田恆存――日本人の「断絶」を乗り越える
  • 著者:浜崎 洋介
  • 出版社:ビジネス社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(184ページ)
  • 発売日:2024-12-19
  • ISBN-10:4828426833
  • ISBN-13:978-4828426839
内容紹介:
「自然な呼吸感」や「自信」を取り戻す思考とは?巨人たちの「批評」が照らし出す現代日本人の「真の幸福」への道。目次「断絶」を乗り越えるという主題 小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグ… もっと読む
「自然な呼吸感」や「自信」を取り戻す思考とは?巨人たちの「批評」が照らし出す現代日本人の「真の幸福」への道。

目次
「断絶」を乗り越えるという主題 小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
なぜ「批評」は昭和初期に登場するのか 小林秀雄をより深く理解するための「近代日本小史」
デビュー論文「様々なる意匠」小林秀雄の試みと、「直観」の真意 小林秀雄の批評
吉本隆明の思想を凝縮した敗戦時20歳の回想「戦争と世代」 純粋戦中世代の葛藤―吉本隆明の「起点」
なぜ吉本隆明は60年安保の時に進歩的知識人を批判したのか 吉本隆明の思想―大衆の原像と対幻想
江藤淳と柄谷行人、1960年代に彼らが感じた焦燥感とは 小林・吉本以降の批評:江藤淳との柄谷行人
小林秀雄“最後の弟子”福田恆存の言葉と日本人の「自然」 あらためて問われる日本人の「自然」
70年代以降の大衆化、根こそぎ変わった日本人の「自然観」 日本人の「自然観」の変質
『大衆の反逆』でオルテガが指摘した「大衆化」の問題とは 「大衆化」とは何か
「一匹と九十九匹と」…政治と文学の関係を問うた福田恆存 福田恆存とは誰か?
福田恆存の思想の根幹にあるロレンスの『黙示録論』とは ロレンス『黙示録論』と人を愛する道
自由とは奴隷の思想ではないか…福田恆存の人間論とは 福田恆存の人間論―演戯と自然
宮本武蔵「我事に於て後悔せず」の真意と小林秀雄の自然観 日本人の「自然観」
福田恆存「快楽と幸福」から読み解く日本人の流儀 幸福論へ―日本人の流儀に向けて
文芸批評家はもう絶滅危惧種なのかもしれない。本書の読後感だ。

小林秀雄、吉本隆明、福田恆存。俊英の批評家が全力を傾け、文学の批評を通じて日本人の無意識を暴露し、混迷の読者に指針を示した。

それはもう昔のこと。人びとは自分の根拠(歴史や自然)を見失い、論争しようにも語る言葉がない。SNSで小さくまとまり、フェイクニュースや陰謀論に振り回される。

浜崎氏は若手の批評家。小林、吉本、福田の仕事を丁寧に読み解き、三人が何を課題としたかを浮き彫りにする。小林は≪分裂してしまった前近代と近代≫を、吉本は≪戦前と戦後≫を繋ごうとした。そして三人とも≪近代社会と自然との葛藤に折り合いをつけ≫ようとしたのだ。

本書はウェブ動画「テンミニッツTV」での連続講演が元になっている。短い時間で語り切る臨場感が小気味よい。かつては誰もがよく本を読んでいた。批評の全盛期だった。そんな往時とポストモダン以降のスマホとウェブの現代との隔たりを、批評の力で無理やり乗り越えてしまう。野心的な力業である。拍手。
小林秀雄、吉本隆明、福田恆存――日本人の「断絶」を乗り越える / 浜崎 洋介
小林秀雄、吉本隆明、福田恆存――日本人の「断絶」を乗り越える
  • 著者:浜崎 洋介
  • 出版社:ビジネス社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(184ページ)
  • 発売日:2024-12-19
  • ISBN-10:4828426833
  • ISBN-13:978-4828426839
内容紹介:
「自然な呼吸感」や「自信」を取り戻す思考とは?巨人たちの「批評」が照らし出す現代日本人の「真の幸福」への道。目次「断絶」を乗り越えるという主題 小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグ… もっと読む
「自然な呼吸感」や「自信」を取り戻す思考とは?巨人たちの「批評」が照らし出す現代日本人の「真の幸福」への道。

目次
「断絶」を乗り越えるという主題 小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
なぜ「批評」は昭和初期に登場するのか 小林秀雄をより深く理解するための「近代日本小史」
デビュー論文「様々なる意匠」小林秀雄の試みと、「直観」の真意 小林秀雄の批評
吉本隆明の思想を凝縮した敗戦時20歳の回想「戦争と世代」 純粋戦中世代の葛藤―吉本隆明の「起点」
なぜ吉本隆明は60年安保の時に進歩的知識人を批判したのか 吉本隆明の思想―大衆の原像と対幻想
江藤淳と柄谷行人、1960年代に彼らが感じた焦燥感とは 小林・吉本以降の批評:江藤淳との柄谷行人
小林秀雄“最後の弟子”福田恆存の言葉と日本人の「自然」 あらためて問われる日本人の「自然」
70年代以降の大衆化、根こそぎ変わった日本人の「自然観」 日本人の「自然観」の変質
『大衆の反逆』でオルテガが指摘した「大衆化」の問題とは 「大衆化」とは何か
「一匹と九十九匹と」…政治と文学の関係を問うた福田恆存 福田恆存とは誰か?
福田恆存の思想の根幹にあるロレンスの『黙示録論』とは ロレンス『黙示録論』と人を愛する道
自由とは奴隷の思想ではないか…福田恆存の人間論とは 福田恆存の人間論―演戯と自然
宮本武蔵「我事に於て後悔せず」の真意と小林秀雄の自然観 日本人の「自然観」
福田恆存「快楽と幸福」から読み解く日本人の流儀 幸福論へ―日本人の流儀に向けて

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年3月1日

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