書評

『日本文学の大地』(KADOKAWA)

  • 2022/03/13
日本文学の大地 / 中沢 新一
日本文学の大地
  • 著者:中沢 新一
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:文庫(288ページ)
  • 発売日:2019-02-23
  • ISBN-10:4044004390
  • ISBN-13:978-4044004392
内容紹介:
言霊の大いなる循環をおそれた万葉集の詩人たち。権力と性愛のふたつの糸が織りなす源氏物語。霊性の贈与を信じ自らを投げ出した親鸞。東海道中膝栗毛の驚くべき軽さと、その底に広がる深淵―。… もっと読む
言霊の大いなる循環をおそれた万葉集の詩人たち。権力と性愛のふたつの糸が織りなす源氏物語。霊性の贈与を信じ自らを投げ出した親鸞。東海道中膝栗毛の驚くべき軽さと、その底に広がる深淵―。古典文学がいまなお私たちを魅了するのは、自然と文化が分離されない「大地」に、その言葉が根をおろしていたからだ。霊、貨幣、共同体、そして国家をめぐる思考から、日本人の無意識を揺さぶる19の古典に迫る。

未来の手引書としての古典

古典とは五百年後、千年後に爆発する一種の時限爆弾である。伝統とは単に先祖が作った型や技を踏襲することでなく、現代の行き詰まりを打開する秘術として用いることも含まれる。井原西鶴が「源氏物語」をリサイクルすることで、江戸町人文化の起爆剤にしたように、古典には時代ごとに新たな息吹を吹き込まれてきた。自然と文化、夢と現実、感覚と論理、信仰と生活が表裏一体だった時代の日本人は、それらが切り離された近代以後を生きている私たちと較べ、実におおらかで、思考のスケールが大きい。私たちの直接の先祖でありながら、その繊細な感覚や大胆な行動に圧倒される。標準化され、飼い馴らされた現代人の限界をやすやすと乗り越える知性が古典には秘められているが、それを発見するには、それこそ今日の現実の外に生きている人の力を借りる必要がある。たとえば、自身の脳の中にタイムマシンを内蔵している中沢新一のような人の力を。
日本文学の大地 / 中沢 新一
日本文学の大地
  • 著者:中沢 新一
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:文庫(288ページ)
  • 発売日:2019-02-23
  • ISBN-10:4044004390
  • ISBN-13:978-4044004392
内容紹介:
言霊の大いなる循環をおそれた万葉集の詩人たち。権力と性愛のふたつの糸が織りなす源氏物語。霊性の贈与を信じ自らを投げ出した親鸞。東海道中膝栗毛の驚くべき軽さと、その底に広がる深淵―。… もっと読む
言霊の大いなる循環をおそれた万葉集の詩人たち。権力と性愛のふたつの糸が織りなす源氏物語。霊性の贈与を信じ自らを投げ出した親鸞。東海道中膝栗毛の驚くべき軽さと、その底に広がる深淵―。古典文学がいまなお私たちを魅了するのは、自然と文化が分離されない「大地」に、その言葉が根をおろしていたからだ。霊、貨幣、共同体、そして国家をめぐる思考から、日本人の無意識を揺さぶる19の古典に迫る。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2015年4月19日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
島田 雅彦の書評/解説/選評
ページトップへ