書評

『老人と子供の考古学』(吉川弘文館)

  • 2022/05/05
老人と子供の考古学 / 山田 康弘
老人と子供の考古学
  • 著者:山田 康弘
  • 出版社:吉川弘文館
  • 装丁:単行本(280ページ)
  • 発売日:2014-06-20
  • ISBN-10:4642057803
  • ISBN-13:978-4642057806
内容紹介:
墓から浮かび上がる縄文人のライフヒストリー。豊富な人骨出土事例から縄文社会の実態に迫り、現代まで繋がる縄文的死生観を考える。

埋葬跡が語る太古の死生観

考古学は机上の空論を嫌う。地味な遺跡の発掘に膨大な時間を費やし、確実な根拠を積み上げようやく一つの学説に辿り着く。本書は考古学界の現場報告と学説の文脈解説にかなりのページを割きつつ、埋葬跡の発掘から緻密に縄文人の死生観を裏付けようとしている。子ども、犬、老人の葬られ方から、縄文時代の家族のあり方、社会における子どもと老人の位置づけ、家畜との関係、さらには縄文時代の階層構造、生と死が循環的につながる原初的死生観が浮き彫りにされる。

すでに生産活動の一線から退いた老人と、これから生産、労働に従事する子どもは、死と再生の円環のつなぎ目になっている。だが、子どもが早死にすれば、循環に亀裂が生じ、共同体にとっても大きな損失となる。そのため特別な埋葬の仕方をし、呪術によって、その亀裂を埋め合わせようとした。その呪術に代わる何らかの思想を少子高齢化時代の日本において、磨き上げることが求められる。
老人と子供の考古学 / 山田 康弘
老人と子供の考古学
  • 著者:山田 康弘
  • 出版社:吉川弘文館
  • 装丁:単行本(280ページ)
  • 発売日:2014-06-20
  • ISBN-10:4642057803
  • ISBN-13:978-4642057806
内容紹介:
墓から浮かび上がる縄文人のライフヒストリー。豊富な人骨出土事例から縄文社会の実態に迫り、現代まで繋がる縄文的死生観を考える。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2014年09月07日

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