書評

『ほんとうの会議 ネガティブ・ケイパビリティ実践法』(講談社)

  • 2025/07/10
ほんとうの会議 ネガティブ・ケイパビリティ実践法 / 帚木 蓬生
ほんとうの会議 ネガティブ・ケイパビリティ実践法
  • 著者:帚木 蓬生
  • 出版社:講談社
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2025-03-21
  • ISBN-10:4065390117
  • ISBN-13:978-4065390115
内容紹介:
人生を変える、新しい形のミーティング。討論なし。批判なし。結論なし。「言いっ放し、聞きっ放し」の会議が、なぜこれほど人生を豊かにするのか?私たちが囚われている「不毛な会議」観を根… もっと読む
人生を変える、新しい形のミーティング。討論なし。批判なし。結論なし。「言いっ放し、聞きっ放し」の会議が、なぜこれほど人生を豊かにするのか?私たちが囚われている「不毛な会議」観を根底からひっくり返す!

目次
第一章 ギャンブル脳を回復させるミーティング(ギャンブル脳とは;自助グループの独特なミーティング ほか)
第二章 心の病いを治すオープン・ダイアローグ(オープン・ダイアローグの発見;オープン・ダイアローグの実際 ほか)
第三章 悪を生む会議と人を成長させるミーティング(悪を生む会議の現在;旧日本軍の悲惨な作戦会議 ほか)
第四章 答えは質問の不幸である(モーリス・ブランショと「サン・ブノワ通りの仲間たち」;サン・ブノワ通りのマルグリット・デュラス ほか)
今日も各地で行われているであろう結論ありきの上意下達的会議は、不毛なばかりでなく悪を生む。

近年多発する企業の不正の裏には、このような会議があると著者は言う。米国のギャンブル症者が偶然始めた話し合いは、言いっ放し、聞きっ放しで討論なし、批判なし、結論なし。仮名で何でも話し合うミーティングの継続がギャンブル症者特有の「今だけ」、「自分だけ」、「金だけ」を消滅させると知って驚いた。

今やこの自助グループの目標は、思いやり、寛容、正直、謙虚だという。見事だ。これは、フィンランドで精神障害者に関わる問題解決法として始まったオープン・ダイアローグと重なる。

核心は多声性。評価抜きで多様な意見を述べ合っているうちに、思いがけない世界が見えてくるのだ。ここで培われるのはネガティブ・ケイパビリティ(答えの出ない事態に耐える力)であり、これが人間を成長させるのだ。

著者の留学体験を踏まえての、ラカン、カミュなどフランスの知性を輩出したパリのアパルトマンでの「終わりなき対話」の紹介も興味深い。「答えは質問の不幸である」という言葉を嚙みしめ、明日からほんとうの会議をしよう。
ほんとうの会議 ネガティブ・ケイパビリティ実践法 / 帚木 蓬生
ほんとうの会議 ネガティブ・ケイパビリティ実践法
  • 著者:帚木 蓬生
  • 出版社:講談社
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2025-03-21
  • ISBN-10:4065390117
  • ISBN-13:978-4065390115
内容紹介:
人生を変える、新しい形のミーティング。討論なし。批判なし。結論なし。「言いっ放し、聞きっ放し」の会議が、なぜこれほど人生を豊かにするのか?私たちが囚われている「不毛な会議」観を根… もっと読む
人生を変える、新しい形のミーティング。討論なし。批判なし。結論なし。「言いっ放し、聞きっ放し」の会議が、なぜこれほど人生を豊かにするのか?私たちが囚われている「不毛な会議」観を根底からひっくり返す!

目次
第一章 ギャンブル脳を回復させるミーティング(ギャンブル脳とは;自助グループの独特なミーティング ほか)
第二章 心の病いを治すオープン・ダイアローグ(オープン・ダイアローグの発見;オープン・ダイアローグの実際 ほか)
第三章 悪を生む会議と人を成長させるミーティング(悪を生む会議の現在;旧日本軍の悲惨な作戦会議 ほか)
第四章 答えは質問の不幸である(モーリス・ブランショと「サン・ブノワ通りの仲間たち」;サン・ブノワ通りのマルグリット・デュラス ほか)

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2025年5月24日

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