私が教職を去るのではない。/『教師』というしごとが私から去っていったのだ。
40年のキャリアを持つ米国の教師が書いた辞表は、全米の教育関係者の共感を呼んだ。公教育に市場原理を取り入れ、点数での競争を軸にした結果、米国の公教育は荒廃した。今日本が、まさにその後を追っている様子が詳細に語られる。効率と生産性だけが求められる教育現場では、人が人でなくなっていくのである。
政治の教育への介入により、校長の指揮命令下で行われる業務が優先され、教員による自主的・自発的・創造的業務は労働時間とされないという実情は、教師というしごとを消している。大阪の小学校長が「豊かな学校文化を取り戻し、学び合う学校にするために」という提言を市長に提出し、教師を取り戻そうとして話題になったが、文書訓告で収められた。
「真に理性的な社会では、最も優秀な人間が教員になって、他の人間はその他の職業で我慢するしかない」(リー・アイアコッカ)
そのために生命の営みの中で教育を捉え直し、社会を支えている一人一人の力で動きを変えようという著者の言葉に賛同する。