書評

『崩壊するアメリカの公教育――日本への警告』(岩波書店)

  • 2020/04/27
崩壊するアメリカの公教育――日本への警告 / 鈴木 大裕
崩壊するアメリカの公教育――日本への警告
  • 著者:鈴木 大裕
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(208ページ)
  • 発売日:2016-08-25
  • ISBN-10:4000247921
  • ISBN-13:978-4000247924
内容紹介:
市場化による公立学校の序列化と教育格差の拡大。規制緩和で使い捨て労働者と化す教員。企業が公教育をターゲットにあらゆる領域で肥え太っていく――。新自由主義の極限にあるアメリカの現実とは。そしてPISAに見られる教育の数値化・標準化の危険性とは。ニューヨーク在住の気鋭の研究者が、近未来の日本に警鐘を鳴らす。
現在でもアメリカ合衆国の教育について漠然とよいイメージをもっている人は多いだろう。中学校の英語の先生だったこの本の著者も、日本の教育の問題点を改善するには競争原理や民間活力の導入など米国流の改革が必要だと考えて研究のために渡米した。そこで遭遇した米国の小中高レベルの教育の惨憺(さんたん)たる現状にショックを受けて、激しく警鐘を鳴らすのがこの本だ。

そこでは単一の指標と化した学力テストの成績によって学校のみならず教師までもが評定される。点数を上げられなければ学校の閉鎖・民営化、教員の解雇などが安易に行われる。経験が受け継がれなくなった現場は教育関連企業に支配される。そのような荒れきった状況が新自由主義政策下で広く行きわたった。

ことが重大なのは、日本では今まさに米国をモデルとしたこのような教育改革が進められているからだ。教育の民営化はすでに始まっている。企業に便利な人が優れた人なのか。数値で計れない能力はいらない能力なのか。「答えのない問いを考え続ける能力」こそが教育のめざすものだという著者に強く同意する。


崩壊するアメリカの公教育――日本への警告 / 鈴木 大裕
崩壊するアメリカの公教育――日本への警告
  • 著者:鈴木 大裕
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(208ページ)
  • 発売日:2016-08-25
  • ISBN-10:4000247921
  • ISBN-13:978-4000247924
内容紹介:
市場化による公立学校の序列化と教育格差の拡大。規制緩和で使い捨て労働者と化す教員。企業が公教育をターゲットにあらゆる領域で肥え太っていく――。新自由主義の極限にあるアメリカの現実とは。そしてPISAに見られる教育の数値化・標準化の危険性とは。ニューヨーク在住の気鋭の研究者が、近未来の日本に警鐘を鳴らす。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

読売新聞

読売新聞 2016.11.13

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
旦 敬介の書評/解説/選評
ページトップへ