書評

『蝿の帝国―軍医たちの黙示録』(新潮社)

  • 2017/09/16
蝿の帝国―軍医たちの黙示録 / 帚木 蓬生
蝿の帝国―軍医たちの黙示録
  • 著者:帚木 蓬生
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(424ページ)
  • 発売日:2011-07-00
  • ISBN-10:4103314192
  • ISBN-13:978-4103314196
内容紹介:
足りない薬、不潔なベッド、聞こえてくる砲撃音。人を生かすために学んだ知恵が、戦場では何の役にも立たぬ―徴兵検査をし、解剖を行い、地下壕を掘り、空爆され、戦犯となり、ソ連軍に脅え、傷病兵に青酸カリを渡す―広島、樺太、満州、沖縄、東京、大刀洗―十五人の若き軍医が極限状況下で見た「あの戦争」の本当の姿。現役医師の著者が軍医たちに捧げる鎮魂歌。

軍医を通じて描く戦争の悲惨

戦記ものの中でも、あまり取り上げられることのない、軍医を主人公にした連作短編集である。この本を書くために、著者は回想録や専門雑誌を丹念に渉猟し、軍医の仕事のなんたるかを、徹底的に調べたようだ。そして、それらを解体し、分析し、消化し、取り込み、再構築したのが本書、ということになろう(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2011年)。

収録作品は、いずれも一人称で書かれているが、そこに出てくる〈私〉はすべて、別の軍医である。つまり、いろいろな軍医の手稿を集めた記録文集、というかたちをとっている。

ただし、この〈私〉はすべて著者その人、といってもよい。著者は、取り込んだ情報を再構築するにあたり、当該人物になりきってその行動を追体験しよう、と決めたと思われる。そうすることで、戦争の悲惨さ、空しさを自分のものとして体感し、さらにそれを読者に共有してほしい、と考えたに違いない。

開戦70周年にふさわしい労作である。
蝿の帝国―軍医たちの黙示録 / 帚木 蓬生
蝿の帝国―軍医たちの黙示録
  • 著者:帚木 蓬生
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(424ページ)
  • 発売日:2011-07-00
  • ISBN-10:4103314192
  • ISBN-13:978-4103314196
内容紹介:
足りない薬、不潔なベッド、聞こえてくる砲撃音。人を生かすために学んだ知恵が、戦場では何の役にも立たぬ―徴兵検査をし、解剖を行い、地下壕を掘り、空爆され、戦犯となり、ソ連軍に脅え、傷病兵に青酸カリを渡す―広島、樺太、満州、沖縄、東京、大刀洗―十五人の若き軍医が極限状況下で見た「あの戦争」の本当の姿。現役医師の著者が軍医たちに捧げる鎮魂歌。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2011年10月2日

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