書評
橋爪 大三郎「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>『吉本隆明全集』(晶文社) <2>黒川 創、瀧口 夕美 編『加藤典洋とは何者だったか?』(編集グループSURE) <3>太子堂 正称『ハイエク入門』(筑摩書房)
2025年「この3冊」
<1>『吉本隆明全集』(晶文社)
<2>黒川 創、瀧口 夕美 編『加藤典洋とは何者だったか?』(編集グループSURE)
<3>太子堂 正称『ハイエク入門』(筑摩書房)
<1>は、吉本隆明氏の全集。二○一四年から刊行を続けてこのほどめでたく完結した。全集の出にくい出版事情のなか、版元の書店や関係者の奮闘に頭が下がる。敗戦後の一時代を代表する在野の偉大な知性が、公衆の議論に開かれることになったことを同時代の誇りとしたい。<2>は、先年惜しくも亡くなった文芸評論家・加藤典洋氏の全著作を読み合わせる研討会。世代の異なる五名が集まった。戦後日本の精神の病巣をあぶり出す加藤氏の厳しい指摘は、五○冊余の著作として残っている。大切な贈り物である。
<3>は、欧州、アメリカを股にかけて活躍した経済学者・思想家ハイエクの思索のあとを辿(たど)る。経済学の中心がアメリカに移って、いかに経済思想が貧相になったことか。ケインズと並ぶハイエクの洞察の数々はいまの時代なお光を放つ。
黒川 創、瀧口 夕美 編『加藤典洋とは何者だったか?』(編集グループSURE)
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