書評

『小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。』(ワイヤーオレンジ(インプレス))

  • 2017/08/08
小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。 / 原田 剛
小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。
  • 著者:原田 剛
  • 出版社:ワイヤーオレンジ(インプレス)
  • 装丁:大型本(32ページ)
  • 発売日:2014-11-29
  • ISBN-10:484437656X
  • ISBN-13:978-4844376569
内容紹介:
とってもやさしかったお母さんが、とつぜん鬼のようになりました。どうしてボクはひとりでナスビを売らないといけないの???

いつか子どもを残して死ぬ母親の鬼のような愛

迫力のある黒の線描画。ナスと文字にだけ使われる濃い紫。シンプルな二色遣いが、深いメッセージを届けてくれる絵本だ。現在四十代の作者の、十代のころの体験がもとになっている。

内容は、ひとことで言うと「小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。」という話。これをお母さんの立場から言うと「小学生の息子を持つ私は、鬼になってナスビを売らせました。」。実はこのお母さんには、鬼にならねばならない理由があった。当時としては治療のむずかしい白血病にかかってしまったのだ。

夫婦でナスビ農家をしていた両親が、団地の前に車を止めて、息子にナスビを売りにいかせる。慣れないうちは声も小さく、どの家でもけんもほろろの対応だ。が、必死で売っていくうちに、セールスがうまくなり、こわかったオッチャンに褒められたりもする。

このオッチャンは、ちょっと大げさに言うと「地域の教育力」を象徴するような存在だ。こういうオッチャンが、昔の日本には、たくさんいたんだろうなあと思う。

当時のボクは、なんでこんなことをやらされるのか、わからなかっただろう。遊びたいさかりの子どもに、無茶ブリもいいところである。

母親の心中を察するに「私が守ってやらなくても、自分で考えて行動できる子どもになってほしい」ということだと思う。それを目の前にある、もっとも親しみ深いナスビで、今日からできるやりかたで、母は実行した。

不器用かもしれないけれど、精一杯のこのアイデアが「ボク」を成長させた。母が亡くなってからボクが聞いた、父の言葉には、思わず涙させられる。

白血病を宣告されなくても、いつかは子どもを残して死ぬという点では、どの母親も同じだ。自分がいなくても生きてゆける力を、子どもが身につけるにはどうしたらいいか。それを考えることが、真に子どもを「守る」ということなのだと教えられる。
小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。 / 原田 剛
小学生のボクは、鬼のようなお母さんにナスビを売らされました。
  • 著者:原田 剛
  • 出版社:ワイヤーオレンジ(インプレス)
  • 装丁:大型本(32ページ)
  • 発売日:2014-11-29
  • ISBN-10:484437656X
  • ISBN-13:978-4844376569
内容紹介:
とってもやさしかったお母さんが、とつぜん鬼のようになりました。どうしてボクはひとりでナスビを売らないといけないの???

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文春オンライン 2016年4月5日

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