書評

『いやいやえん』(福音館書店)

  • 2020/03/07
いやいやえん / 中川 李枝子
いやいやえん
  • 著者:中川 李枝子
  • 出版社:福音館書店
  • 装丁:単行本(180ページ)
  • 発売日:1962-12-25
  • ISBN-10:9784834000108
  • ISBN-13:978-4834000108
内容紹介:
主人公しげるが通う保育園のお話が5話収められている。短いお話も長いお話もあり、好きなものから読める。また、絵も多いため、簡単に読み進めることができる。「ちゅーりっぷほいくえん」は、しげるの保育園のことを簡単に紹介している、短いお話。「くじらとり」は、しげると保育園のお友だちが、… もっと読む
主人公しげるが通う保育園のお話が5話収められている。短いお話も長いお話もあり、好きなものから読める。また、絵も多いため、簡単に読み進めることができる。
「ちゅーりっぷほいくえん」は、しげるの保育園のことを簡単に紹介している、短いお話。「くじらとり」は、しげると保育園のお友だちが、くじらとりにでかけたお話。どこに行ったのかはないしょ。「ちこちゃん」は、しげるとちこちゃんが、保育園で机の上にのるお話。新しい子が保育園に来る「やまのこぐちゃん」は、ちょっどびっくり! 新しく来たやまのこぐちゃんは、ほんもののこぐま! しげるはなかよくなれるかな? 「おおかみ」は、おおかみがお昼寝しているところにしげるが来て…おおかみが、子どもを食べるのが大好きだって、知ってるよね? 「山のぼり」は、保育園のみんなで山のぼりにいって、まいごになったしげるが、とんでもないものにあっちゃうお話。『いやいやえん』は、しげるが「いやいやえん」っていうヘンな保育園につれてかれちゃうお話。
ひらがなが多くて、漢字にはすべて「ふりがな」がふってあり、小学校低学年くらいから1人で読める、子どもたちに人気の童話。(つちだみき)

今日は「いやいやえん」

朝、子どもが幼稚園に行きたくないと言う(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2008年)。

「どうして?」「どうしても」「どこか痛いの?」「どこもいたくない」「なら、行こうよ」「いやだ、いきたくない」「そういうの、ずる休みっていうんだよ」「じゃあ、ずるやすみする」

園バスを見送ったあとも説得したが、とにかく「いかない」の一点張りだ。あまり深追いしても、いい結果にならないような気がして、とうとうその日は休むことにした。

ちなみに息子は去年、年少児ではかなり珍しい「皆勤賞」だった。それが、こんな、なんだかよくわからない理由で休むことになろうとは。とんだ変化球に、私も戸惑ってしまう。

とりあえず、こういう時は気晴らしだと思い、二人で、近所の図書館へ出かけた。児童書の並ぶコーナーへ足を運ぶと、懐かしい一冊が目にとまった。『いやいやえん』。小学生のころ、夢中になって読んだ記憶がある。息子もまた、題を見て目を輝かせた。

「これだよ。ようちえんじゃなくて、今日は、いやいやえんなんだよ!」

主人公のしげるは、ちょうど息子と同じ四歳だ。やんちゃ坊主で、叱られるようなことばかりしている。しげるがやった17のことが列挙されているページにくると、息子は大喜び。特に気に入ったのが、次の三つだ。

「はなくそを、なめました」「うわばきを手にはいて、かおをなでました」「おべんとうのとき、わざと、にんじんをおとしました」……ぐひぐひ笑って、実に嬉しそう。まあ自分も、似たようなことをやっているのだろう。

机に乗ったことを謝らないしげる。「ちこちゃんもやったから、いい」というのが理由だ。じゃあ、なんでもちこちゃんの真似をするのですねと言って、先生はちこちゃんのスカートをしげるにはかせてしまう。

「なるほど~そういう手があるか」と私が感心している横で、息子は涙目になって、本の中の先生をにらんでいた。ひどい、そこまですることはないじゃないか! と、気持ちは完全にしげるの味方、というよりしげるそのもののようだ。

「いやいやえん」は、保育園に行きたくないというしげるが連れて行かれる不思議な園だ。そこでは、子どもは好き勝手なことばかりしている。悪いことをしても、先生は叱らない。ケンカも、止めたりしない。お弁当は、みんな好きなものしか食べない。

ここで一日を過ごしたしげるは、すっかり自分の保育園が懐かしくなる。規則で縛らなくても、好き勝手をやりつくせば、子どもはこうなるんですよ、と囁かれているような気がした。「いやいやえん」は、子どもへの信頼なくしては成立しない。自分は、息子にとっての「いやいやえん」を作ってやれるだろうか。小学生の時には思いもしなかった感想を抱き、最後のページを閉じた。

『いやいやえん』を一緒に読んだからかどうかは、わからないが、翌日から息子は、また元気に幼稚園に通っている。

【この書評が収録されている書籍】
かーかん、はあい 子どもと本と私 / 俵万智
かーかん、はあい 子どもと本と私
  • 著者:俵万智
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 装丁:文庫(224ページ)
  • 発売日:2012-05-08
  • ISBN-10:4022646667
  • ISBN-13:978-4022646668
内容紹介:
6歳になった今も、息子は絵本を持って母のもとへやってくる――。子育てをする歌人が、子どものために選び、自身も心を揺り動かされた絵本48冊を紹介したエッセイ。母親世代にも懐かしい不朽の名作から、図鑑、ことば遊び、シュールなものまで、幅広く選んでいる。成長に応じた絵本探しの参考として、また母と子のあたたかな交流を描いた本として楽しい一冊。単行本全2巻を1冊にまとめて文庫化。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

いやいやえん / 中川 李枝子
いやいやえん
  • 著者:中川 李枝子
  • 出版社:福音館書店
  • 装丁:単行本(180ページ)
  • 発売日:1962-12-25
  • ISBN-10:9784834000108
  • ISBN-13:978-4834000108
内容紹介:
主人公しげるが通う保育園のお話が5話収められている。短いお話も長いお話もあり、好きなものから読める。また、絵も多いため、簡単に読み進めることができる。「ちゅーりっぷほいくえん」は、しげるの保育園のことを簡単に紹介している、短いお話。「くじらとり」は、しげると保育園のお友だちが、… もっと読む
主人公しげるが通う保育園のお話が5話収められている。短いお話も長いお話もあり、好きなものから読める。また、絵も多いため、簡単に読み進めることができる。
「ちゅーりっぷほいくえん」は、しげるの保育園のことを簡単に紹介している、短いお話。「くじらとり」は、しげると保育園のお友だちが、くじらとりにでかけたお話。どこに行ったのかはないしょ。「ちこちゃん」は、しげるとちこちゃんが、保育園で机の上にのるお話。新しい子が保育園に来る「やまのこぐちゃん」は、ちょっどびっくり! 新しく来たやまのこぐちゃんは、ほんもののこぐま! しげるはなかよくなれるかな? 「おおかみ」は、おおかみがお昼寝しているところにしげるが来て…おおかみが、子どもを食べるのが大好きだって、知ってるよね? 「山のぼり」は、保育園のみんなで山のぼりにいって、まいごになったしげるが、とんでもないものにあっちゃうお話。『いやいやえん』は、しげるが「いやいやえん」っていうヘンな保育園につれてかれちゃうお話。
ひらがなが多くて、漢字にはすべて「ふりがな」がふってあり、小学校低学年くらいから1人で読める、子どもたちに人気の童話。(つちだみき)

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2008年5月28日

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