後書き
『かーかん、はあい 子どもと本と私』(朝日新聞出版)
単行本あとがき I
「かーかん、はあい」は、二〇〇五年十一月から二〇〇七年十月まで、朝日新聞の夕刊に月一回、連載したものだ。息子の年齢でいうと、二歳から四歳まで。今月一緒に読んだ本のことを今月書く、という感じで二年が過ぎた。ほぼリアルタイムの育児&読書日記は、今も紙上で継続中(当時)だが、そのうち自然に終了するときがくるだろう。いつか子どもは、自分で本を読み始める。そうなったらもう、「親子で一緒に本を読む時間」はなくなってしまう。親であることの楽しみは、いつも期間限定だ。その兆候はすでにあって、息子はずいぶん読めるようになってきた。ひらがなを覚えはじめたときの、最初のテキストは「自分が赤ちゃんのころに親しんだ絵本」だった。本書でも紹介した『じゃあじゃあびりびり』や『ころ ころ ころ』。絵になじみがあるし、文字は少ないし、分量が多くないので「一冊読んだ!」という達成感が得られやすいのが、よかったようだ。なんとなくとってあった絵本たちだが、意外なところで、二度目の活躍をしてくれた。
最近では『ドラえもん』があれば、いくらでも、じーっとおとなしくしている。買い物や家事をしたいときには、大助かりだ。こんなふうになるまで、あっというまだったような気もするが、本書をまとめて読みかえしてみると、絵本と過ごした時間の長さ豊かさが、あらためて蘇ってくる。
本になるにあたって嬉しいことの一つが、五味太郎さんのイラストだ。毎回描きおろしていただいたのに、新聞紙上ではスペースの関係で、小さく配されていた。本書では、ほぼ原寸大の美しい印刷で、味わうことができる(単行本にのみ収録)。
イラスト付きのゲラを息子に見せたら「ごみおじしゃん!」と叫んで、一枚一枚、熱心に見入っていた。
二〇〇八年 秋
俵 万智
【この後書きが収録されている書籍】
ALL REVIEWSをフォローする
































