後書き
『かーかん、はあい 子どもと本と私』(朝日新聞出版)
単行本あとがきⅡ
「かーかん、はあい」二冊目の単行本となる本書は、二〇〇七年十一月から二〇〇九年九月まで、月に一度、朝日新聞に連載したものをまとめた(「ドラえもんの魅力」は、「本の窓」に掲載されたものに若干手を入れました)。一冊目の連載がはじまったころ二歳だった息子は、今度の春、小学生になる。絵本が中心だった読書にも、ずいぶん広がりが出てきたなあと、本書の目次を見ながら思った。
体験したことを調べる、図画や工作を楽しむ、国や社会のことを考える、言葉の不思議を味わう……。さまざまな場面に寄り添ってくれる本が、息子の日常に登場してきた、そんな時期だったようだ。
小学生になれば、またいっそう読書の幅も広がることだろう。私自身のことを振り返ってみても、一番たくさん、そして自由に読んでいたのが、小学生時代だったような気がする。
最近は、幼稚園や図書館で、息子自身が選んだものを借りることも多くなってきた。成長は、いつも頼もしく、そしてちょっぴり寂しい。これからも、いつでもそばに本があるように、サポートしつつ、見守ってやりたいと思う。
一冊目につづき、今回も五味太郎さんのすてきな絵で、本書を飾ってもらえたことが嬉しい。いくつか、描きおろしのものまで入っているという贅沢さである(単行本にのみ収録)。
二冊目がまとまるのを区切りに、紙面の連載のほうも終了した。お子さんやお孫さんの「本選びの参考にしています」という声を聞くたび、励まされ、また身のひきしまる思いがした。応援、ありがとうございました。
息子はこのごろ、どうやら母の職業に気づいたようで「どうしてご本を書くひとになろうと思ったの?」などと聞いてくる。「それは、ご本が大好きだからだよ」。シンプルすぎるかもしれないけれど、そうとしか答えられないな、と思う。
二〇〇九年 秋
俵 万智
【初出単行本】
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