書評

『ホスト万葉集 嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名サヨナライツカ』(講談社)

  • 2024/04/05
ホスト万葉集 嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名サヨナライツカ / 手塚マキと歌舞伎町ホスト75人from Smappa!  Group
ホスト万葉集 嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名サヨナライツカ
  • 著者:手塚マキと歌舞伎町ホスト75人from Smappa! Group
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(170ページ)
  • 発売日:2020-07-08
  • ISBN-10:4065201446
  • ISBN-13:978-4065201442
内容紹介:
いまだからこそ、君に届けたい。おれたちの、五・七・五・七・七を!「コロナ」という、歌舞伎町最大の危機との戦いのなか、ホスト達は生きている。そして、愛について考えている。――愛ってな… もっと読む
いまだからこそ、君に届けたい。おれたちの、五・七・五・七・七を!
「コロナ」という、歌舞伎町最大の危機との戦いのなか、ホスト達は生きている。そして、愛について考えている。――愛ってなんだ? 恋愛を、悩みを、希望、欲望、本音を叫ぶ。五・七・五・七・七の短歌で!
短歌を作ったのは、歌舞伎町に6店舗のホストクラブがあるスマッパ!グループの会長・手塚マキ氏とホスト75人。
編者(選歌・構成)は、280万部のベストセラー歌集『サラダ記念日』の著者・俵万智氏と、野口あや子氏、小佐野彈氏という短歌界の第一線で活躍する歌人。
2年前、小佐野彈氏の歌集『メタリック』の発売イベントで短歌を作って以来、ホストたちは、ほぼ月一回、歌会を開催し続けた。選者・指導役として、俵・野口・小佐野各氏が加わり本格化。NHKBS番組「平成万葉集」でも紹介された。ホスト歌会は20回以上。5月にはコロナ下で、Zoom歌会も。作った短歌900首から、俵・野口・小佐野各編者が300首を厳選!
五・七・五・七・七の短歌だから語れる本当の気持ち。得意客(姫と呼ぶ)との会話、おもてなし、仕事で割り切れない男女の感情。コロナ下での焦燥。
もともと短歌とは、愛を語り合う言葉の器だ。ホストと短歌。実は、これほど相性の良いものはなかった。まさにいまだからこそ届けたい、感動の短歌集。
(収録したおもな短歌作品)
嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名サヨナライツカ
見つめ合い あ、これダメだね 照れ笑い カラダは離すもココロは密で
夜が更けて意外と広いゴジラ前 静けさ光る靖国通り
君からの返信ないが既読付く俺に連絡いま自粛かな
自粛中ライトも消えた看板の君の笑顔がなんか寂しい
錆びてなお耐えて耐えて耐え抜いて磨き続ける輝く日まで
「ごめんね」と泣かせて俺は何様だ誰の一位に俺はなるんだ
眠らない街といわれたネオン街 たまにはゆっくりおやすみなさい
「自粛警察」に「他県ナンバー狩り」。コロナ禍で生まれたイヤな言葉はいろいろあるけれど、一番ひどいのは「夜の街」だろう。いわゆる“接待を伴う飲食店”が感染拡大の元凶であるかのように、行政が喧伝した。ろくに休業補償もしないで。マスコミもそれに乗り、差別と憎悪を煽った。「職業に貴賤なし」なんてウソだったんだね。

『ホスト万葉集』(短歌研究社発行、講談社発売・1430円)はホストたちによる歌集。新宿・歌舞伎町の元ナンバーワン・ホストで、いまは多数のホストクラブやバーなどを経営する手塚マキと、彼の店で働く75人のホストたちが詠んだ短歌295首を収録している。

彼らは毎月、歌会を開いている。きっかけは手塚が経営する書店で行った小佐野彈の歌集発売イベント。歌会はコロナ禍のなかでもビデオ会議システムを使って続けられた。2年近くの間に約900の歌が詠まれ、歌会の選者である小佐野と俵万智、野口あや子の3歌人がこの本のために選歌・構成した。

歌舞伎町一番街のアーチの前にホストが並ぶ表紙を見たときは、キワモノかと思った。歌われているのは、クラブの中の日常であり、客への思いである。笑ってしまうコミカルなものもあれば、人生の本質を突いていると感じるものもある。一首一首を読むうちに、ここにあるのは短歌の本質ではないかと考え直した。

ホストクラブは疑似恋愛の空間である。客もホストも、それが虚構だという前提で言葉を交わす。心をつかめば、お金をたくさん使ってくれる。しかし、慣れと甘えが生じると客はツケで飲むようになり、ときに回収できなくなる。そのスリルが彼らの短歌から伝わってくる。ホストクラブは高度な娯楽であり、優れた文化ではないか。

<歌舞伎町 東洋一の繁華街 不要不急に殺される街>とホストのひとり、江川冬依は詠む。生活の手段が奪われるという意味で、「殺される」はけっしてオーバーではない。不要不急が人生に潤いを与えるのに。
ホスト万葉集 嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名サヨナライツカ / 手塚マキと歌舞伎町ホスト75人from Smappa!  Group
ホスト万葉集 嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名サヨナライツカ
  • 著者:手塚マキと歌舞伎町ホスト75人from Smappa! Group
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(170ページ)
  • 発売日:2020-07-08
  • ISBN-10:4065201446
  • ISBN-13:978-4065201442
内容紹介:
いまだからこそ、君に届けたい。おれたちの、五・七・五・七・七を!「コロナ」という、歌舞伎町最大の危機との戦いのなか、ホスト達は生きている。そして、愛について考えている。――愛ってな… もっと読む
いまだからこそ、君に届けたい。おれたちの、五・七・五・七・七を!
「コロナ」という、歌舞伎町最大の危機との戦いのなか、ホスト達は生きている。そして、愛について考えている。――愛ってなんだ? 恋愛を、悩みを、希望、欲望、本音を叫ぶ。五・七・五・七・七の短歌で!
短歌を作ったのは、歌舞伎町に6店舗のホストクラブがあるスマッパ!グループの会長・手塚マキ氏とホスト75人。
編者(選歌・構成)は、280万部のベストセラー歌集『サラダ記念日』の著者・俵万智氏と、野口あや子氏、小佐野彈氏という短歌界の第一線で活躍する歌人。
2年前、小佐野彈氏の歌集『メタリック』の発売イベントで短歌を作って以来、ホストたちは、ほぼ月一回、歌会を開催し続けた。選者・指導役として、俵・野口・小佐野各氏が加わり本格化。NHKBS番組「平成万葉集」でも紹介された。ホスト歌会は20回以上。5月にはコロナ下で、Zoom歌会も。作った短歌900首から、俵・野口・小佐野各編者が300首を厳選!
五・七・五・七・七の短歌だから語れる本当の気持ち。得意客(姫と呼ぶ)との会話、おもてなし、仕事で割り切れない男女の感情。コロナ下での焦燥。
もともと短歌とは、愛を語り合う言葉の器だ。ホストと短歌。実は、これほど相性の良いものはなかった。まさにいまだからこそ届けたい、感動の短歌集。
(収録したおもな短歌作品)
嘘の夢 嘘の関係 嘘の酒 こんな源氏名サヨナライツカ
見つめ合い あ、これダメだね 照れ笑い カラダは離すもココロは密で
夜が更けて意外と広いゴジラ前 静けさ光る靖国通り
君からの返信ないが既読付く俺に連絡いま自粛かな
自粛中ライトも消えた看板の君の笑顔がなんか寂しい
錆びてなお耐えて耐えて耐え抜いて磨き続ける輝く日まで
「ごめんね」と泣かせて俺は何様だ誰の一位に俺はなるんだ
眠らない街といわれたネオン街 たまにはゆっくりおやすみなさい

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2020年9月19日

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