前書き

『BLW(赤ちゃん主導の離乳)をはじめよう!』(原書房)

  • 2020/12/15
BLW(赤ちゃん主導の離乳)をはじめよう! / 一般社団法人日本BLW協会
BLW(赤ちゃん主導の離乳)をはじめよう!
  • 著者:一般社団法人日本BLW協会
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(152ページ)
  • 発売日:2020-11-18
  • ISBN-10:4562057939
  • ISBN-13:978-4562057931
内容紹介:
固形食を手づかみで食べ、自然に口と歯、全身の発達をうながす離乳法、BLWの基本を多くのイラストを使ってていねいに解説します。
赤ちゃん専用の離乳食は作らない離乳法「BLW」がいまお母さんのあいだで話題になっています。
おかゆとかじゃなくて、そのままの食材をいきなり「手づかみ」で食べる……みたい。
海外ではわりとポピュラーな方法……らしい。
SNSでもよく投稿を見るようになった……気がする。
細切れの情報は目にするようになった気がするけれど、結局なにをどうするの? なにがいいの? 危険じゃないの?
そんな興味と不安にこたえてくれる本『BLW(赤ちゃん主導の離乳)をはじめよう!』(一般社団法人日本BLW協会著)が出版されました。
結局BLWとは何か――本書の著者:日本BLW協会の代表・尾形夏実さん(看護師)による前書きを特別公開します。

離乳食の「大変」を「楽しい」に変えたい

長女が5か月の頃、子育て支援センターの離乳食教室に参加しました。
あるお母さんが栄養士さんにこんな質問をされていました。
「まわりの先輩ママたちから離乳食は大変よって言われるんです。やっぱり大変ですか? 乗り切るコツみたいなものはありますか?」と。
栄養士さんはこのように答えました。「そう、大変ですよ。でも、離乳食の時期はいつか必ず終わります。だからこの1年だけ、1年だけを耐えましょう。そのうち楽になります。あっという間よ!」

栄養士さんは、不安な気持ちのお母さんをはげましたかったのだと思います。
でも――私は強い違和感をおぼえました。
たしかに「大変」かもしれない。けれど、「あっという間」に過ぎるのであれば、「耐える」のではなく「楽しく」できないのか、と。
最初から「耐える」ことを前提にはじめる離乳食なんて、なんだかつまらない。
お母さんにとっても、赤ちゃんにとっても、全然ハッピーじゃない。そう私は思いました。

私はふだん看護師として働いていますが、日本BLW協会の活動をするようになってから、若いお母さん方と知り合う機会がぐんと増えました。
日本のお母さんは本当にまじめです。そして、とても立派です。
はじめての育児で右も左もわからない状態で四苦八苦しているお母さん。上の子のめんどうを見ながら下の赤ちゃんの世話をするお母さん。朝から晩まで、いえ夜中まで、本当は長い一日がそれこそあっという間に過ぎていく日々のなか、少しの休みもなく子どもを育てるのは本当に大変です。
そんななか、多くのお母さんたちが苦労しているもののひとつが離乳食です。
現代の日本で離乳食というと、ほとんどの方が10倍粥からはじめて、野菜や果物をすりつぶして、裏ごししたものをスプーンで赤ちゃんに与える方法を思い浮かべるのではないでしょうか。
私自身も、長女に離乳食の時期が来たときに思い浮かべたのはその方法でした。というより、それ以外の方法があるなんて思いもしませんでした。そう、日本のほとんどのお母さんたちは、離乳食の方法に選択肢なんてないと思っているのです。

では、現在の離乳食の進め方は、本当にお母さんや赤ちゃんに合っているのでしょうか。
多くのお母さんたちが「離乳食作りが大変」「せっかく作ったのに赤ちゃんが食べてくれない」などの悩みを抱えています。そして、実は赤ちゃんにとっても従来の離乳食の進め方は「自分の意思が尊重されない、つらい時間」になっている可能性があります。
これからはじまる人生のなかで、食事は生きることと切っても切れないものです。
そんな食生活の土台となるべき離乳期が、親子にとって「大変」で「つらい」ものでしかないのだとしたら、それはとても悲しいことではないでしょうか。

食事は栄養を体に取り込むだけのものではありません。
味を楽しみ、食感をおもしろいと思い、家族やまわりの人たちとコミュニケーションをとりながら楽しい時間を過ごす――それらも食事の大切な役割です。
本当にあたりまえのことですが、食事とはそうしたことも含めて食事なのだ、と私たち全員が理解しています。
けれど、こと赤ちゃんの離乳食の話になると、その大切な役割はなぜか忘れ去られてしまいがちです。
BLW(赤ちゃん主導の離乳)はそんな「あたりまえ」のことを、私たちに思い出させてくれます。

私がBLWを知ったとき、まだ日本でBLWに関する情報を得るのはとても困難でした。
海外に住んでいる方(多くはお母さん)が書いているブログを読むか、イギリスでBLWを最初に提唱したジル・ラプレイさんの著書『Baby-Led Weaning』を取り寄せ、英語で読むしかありませんでした。それこそ手探りでBLWについて学びを深める日々が続きました。
やがて、「この方法を日本のお母さんたちにもっと知ってもらいたい。それだけの価値はある方法だ」と強く思うようになりました。その想いが、一般社団法人日本BLW協会の設立につながりました。
現在、日本BLW協会はお母さんたちに向けたBLWのセミナーや、子育てをする保護者や支援者向けの窒息セミナー等を行っています。
同時に、そのお母さんや保護者の方を支援する立場の専門家向けにも、セミナーや情報提供をする活動を積極的にしています。
これらの活動を通し、ひとりでも多くの方にBLWについて知ってもらい、安全に楽しく赤ちゃんとの食事の時間を過ごしてもらえることが、私たちの望みです。

この本は、上記のジル・ラプレイさんに許可をいただき、彼女の著書『Baby-Led Weaning』――邦訳『「自分で食べる!」が食べる力を育てる――赤ちゃん主導の離乳(BLW)入門』――をもとに日本の読者のために新たに構成したものです。
時間があまりないお母さんたちが短時間でBLWのことがわかるように、そのエッセンス部分をまとめました。
文章をコンパクトにしたかわりに、もとの本にはなかった写真やイラスト、レシピ集を追加し、実際に日本でBLWを行っているお母さんたちからいただいた体験談も含めて作成した「お母さんたちのためのBLW入門」となっています。
レシピ集部分については、BLWはイギリス発祥なので、本書では食材選びなども日本の文化に馴染むようにアレンジしたものを掲載しています。

「BLWって最近よく耳にするけど、どんなものなの?」「一体どうやってはじめたらいいの?」など、疑問に思っているお母さんや、「BLWを実践してみたい!」というお母さんの手助けに本書がなれれば、こんなにうれしいことはありません。

[書き手]尾形夏実(一般社団法人日本BLW協会・代表理事/看護師)
BLW(赤ちゃん主導の離乳)をはじめよう! / 一般社団法人日本BLW協会
BLW(赤ちゃん主導の離乳)をはじめよう!
  • 著者:一般社団法人日本BLW協会
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(152ページ)
  • 発売日:2020-11-18
  • ISBN-10:4562057939
  • ISBN-13:978-4562057931
内容紹介:
固形食を手づかみで食べ、自然に口と歯、全身の発達をうながす離乳法、BLWの基本を多くのイラストを使ってていねいに解説します。

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