書評

『幼い子の詩集 パタポン 1』(童話屋)

  • 2020/05/05
幼い子の詩集 パタポン 1 /
幼い子の詩集 パタポン 1
  • 出版社:童話屋
  • 装丁:文庫(155ページ)
  • 発売日:2002-04-15
  • ISBN-10:4887470266
  • ISBN-13:978-4887470262
内容紹介:
子どもが幼いときに、いい詩に出会うと、やさしい気持ちが引き出されて、他人の悲しみがわかる心が育ちます。お母さんやお父さんは、いい詩を子どもが赤ちゃんのときから、声に出して読んであげるのがよいでしょう。美しい言葉は、耳から入って一生の宝ものになるのです。

中川李枝子さんの詩「手をつなごう」や、瀬田貞二訳アリンガムの「思い出」、みらいなな訳ゾロトウの「へんてこりん」と、名詩が目白おしです。

いもくって ぶ、のおじちゃん

私の本棚を眺めていた息子が、「あ、たにかわしゅんたろう!」と嬉しそうに指さした。確かにそこには、集英社文庫の『谷川俊太郎詩選集』が1から3まで並んでいる(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2008年)。

ひとつひとつの漢字が読めるわけではない。ひとかたまりの絵のようなものとして「谷川俊太郎」が「たにかわしゅんたろう」なのである。有名人なので呼びすてで申し訳ないが、さらに大胆なことに、「いもくって ぶ、のおじちゃんだよね」などと息子は言っている。

『幼い子の詩集 パタポン①』『幼い子の詩集 パタポン②』という可愛らしい詩集があって、かさばらないので、子どもとのちょっとしたおでかけのときなど、バッグに入れていくことが多い。隙間のような時間でも、短い詩なら読んでやることができるし、収められている詩が、どれも本当によくて、読んでいるこちらまで心が豊かになってくる。

まど・みちお、川崎洋、草野心平、阪田寛夫、A・A・ミルン……宝石のような言葉たちが、気どらず、楽しげに、ここには詰まっている。レイアウトもきれいで、すべての漢字に薄い茶色でルビがふってあるのも、優しい心くばりだ。

この詩集のなかで、目下、息子のダントツのヒーローが「谷川俊太郎」である。とにかく、谷川さんの詩のところへくると、喜びようが半端ではない。たくみな言葉遊びやリズムに加え、「おなら」とか「ちんぽこ」とか、子どもの喜ぶツボが、しっかり押さえられているのが、いいのだろう。

もちろん、それだけではなく、子どもの心をとらえる谷川マジックが、密かに使われているのだろうが。「いもくって ぶ」というのは、「おならうた」という詩の、冒頭の一節だ。

先日、谷川俊太郎さんが出演される朗読の催(もよお)しがあったので、息子と出かけてきた。子どもが楽しめるプログラムということで、会場には大勢の親子連れが集まっていた。

「かっぱかっぱらった かっぱらっぱかっぱらった……」。『パタポン』で親しんでいる詩が朗読されると、「あー、これ、しってる!」とひときわ嬉しそう。そして我々親子の期待どおり「おならうた」も登場。まわりの子どもたちの反応を見ていると、やっぱり「おなら、おなら」と大喜びだ。たぶん、ふだんなら顔をしかめるであろうお母さんたちも、谷川先生が読まれるのだからと、ありがたく「おならうた」を拝聴していた。

プログラムに印刷されていた「谷川俊太郎」や、『パタポン』にルビつきで書かれている「谷川俊太郎」などを見ているうちに、息子は読めるようになったようだ。「俵万智」より先、というのが、母としてはちょっと悔しい。

【この書評が収録されている書籍】
かーかん、はあい 子どもと本と私 / 俵万智
かーかん、はあい 子どもと本と私
  • 著者:俵万智
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 装丁:文庫(224ページ)
  • 発売日:2012-05-08
  • ISBN-10:4022646667
  • ISBN-13:978-4022646668
内容紹介:
6歳になった今も、息子は絵本を持って母のもとへやってくる――。子育てをする歌人が、子どものために選び、自身も心を揺り動かされた絵本48冊を紹介したエッセイ。母親世代にも懐かしい不朽の名作から、図鑑、ことば遊び、シュールなものまで、幅広く選んでいる。成長に応じた絵本探しの参考として、また母と子のあたたかな交流を描いた本として楽しい一冊。単行本全2巻を1冊にまとめて文庫化。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

幼い子の詩集 パタポン 1 /
幼い子の詩集 パタポン 1
  • 出版社:童話屋
  • 装丁:文庫(155ページ)
  • 発売日:2002-04-15
  • ISBN-10:4887470266
  • ISBN-13:978-4887470262
内容紹介:
子どもが幼いときに、いい詩に出会うと、やさしい気持ちが引き出されて、他人の悲しみがわかる心が育ちます。お母さんやお父さんは、いい詩を子どもが赤ちゃんのときから、声に出して読んであげるのがよいでしょう。美しい言葉は、耳から入って一生の宝ものになるのです。

中川李枝子さんの詩「手をつなごう」や、瀬田貞二訳アリンガムの「思い出」、みらいなな訳ゾロトウの「へんてこりん」と、名詩が目白おしです。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2008年11月26日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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