書評

『ひなた』(光文社)

  • 2026/06/06
ひなた / 吉田 修一
ひなた
  • 著者:吉田 修一
  • 出版社:光文社
  • 装丁:文庫(272ページ)
  • 発売日:2008-06-12
  • ISBN-10:4334744281
  • ISBN-13:978-4334744281
内容紹介:
新堂レイは有名ブランドHに就職したばかりの新人広報。彼女は、海で偶然再会した同級生の大路尚純と昨年夏から付き合っている。尚純は大学生。彼が両親と暮らす文京区小日向の家で、兄夫婦が同居をし始めた―。それぞれが関わり合って淡々とした日常を紡ぎだす。お互いに踏み込むことのできない「聖跡」を抱えながらも―。四人の視点で「春夏秋冬」を描き出す。

ビルの谷間、家の温かさ

吉田修一の小説を読むたびに、巧いなぁと思う。特にこの『ひなた』みたいに、大きな事件が起こるわけでもなく、暴力もセックスも出てこない小説って、小説のテクニックが直接問われるだろう。だが、何の苦もなく読み通すことができる。吉田修一の筆の冴(さ)え。

出てくる主な登場人物は、新堂レイ、大路尚純、大路桂子、大路浩一の四人。それぞれの四季を順番に描き出しながら、小説は一年を通過する。レイと尚純は恋人同士、桂子と浩一は夫婦で浩一の両親と同居している。尚純と浩一は兄弟だが、血の繋(つな)がりがない(と思ってきた)。

物語の中心は、大路家である。大路家、といっても漠然とした家族ではなく、彼らの住まう家である。地下鉄丸ノ内線の茗荷谷駅を出て、高層マンションを抜けると、まるでそこだけぽっかりと別の空気を呼吸しているような、その名も「小日向」という町が現れる。大路家はそこにある。

築五十年は経(た)っている大きな家に、大勢の人物たちは出入りし、時に長く留まり、闖入(ちんにゅう)者を迎え入れ、坂道から空を見上げたりする。家の温かさに生かされている人々の物語。


ひなた / 吉田 修一
ひなた
  • 著者:吉田 修一
  • 出版社:光文社
  • 装丁:文庫(272ページ)
  • 発売日:2008-06-12
  • ISBN-10:4334744281
  • ISBN-13:978-4334744281
内容紹介:
新堂レイは有名ブランドHに就職したばかりの新人広報。彼女は、海で偶然再会した同級生の大路尚純と昨年夏から付き合っている。尚純は大学生。彼が両親と暮らす文京区小日向の家で、兄夫婦が同居をし始めた―。それぞれが関わり合って淡々とした日常を紡ぎだす。お互いに踏み込むことのできない「聖跡」を抱えながらも―。四人の視点で「春夏秋冬」を描き出す。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2006年2月8日

ALL REVIEWS 書評講座(オンライン受講) ≫オンラインで参加する
現地満席|オンライン参加OK
「読む」側から、 「書く」側へ。
オンライン参加OK/過去回アーカイブ付。
全12回・途中申込OK。豪華講師陣の書評講座、開催中。
  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
陣野 俊史の書評/解説/選評
ページトップへ