書評

『命を選ぶ 遺伝病の運命に抗ったある女性の物語』(祥伝社)

  • 2026/06/03
命を選ぶ 遺伝病の運命に抗ったある女性の物語 / 下山 進
命を選ぶ 遺伝病の運命に抗ったある女性の物語
  • 著者:下山 進
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:単行本(320ページ)
  • 発売日:2026-05-01
  • ISBN-10:4396618697
  • ISBN-13:978-4396618698
内容紹介:
プロローグ 光る眼野口麻衣子の右目は義眼だ。生後4カ月で網膜にできたがんのために摘出した。それが遺伝する病気とはっきりとはわからず第二子七誠を産む。生後3週間で七誠の左目が光る。… もっと読む
プロローグ 光る眼
野口麻衣子の右目は義眼だ。生後4カ月で網膜にできたがんのために摘出した。それが遺伝する病気とはっきりとはわからず第二子七誠を産む。生後3週間で七誠の左目が光る。

第1章 手がなくても足がなくても産む病院
七誠の生まれる17年前、神奈川の県立病院であるダウン症の女の子が生まれる。出産時にダウン症とその合併症を初めて告げられた母親は「なぜ知らせてくれなかったのか」と問う。
第2章 青い芝の会
山中美智子が羊水検査をできなかったのには理由があった。県は障害者団体「青い芝の会」の激しい抗議活動に屈する形で「一切の出生前診断をしない」と76年に約束したのだった。

第3章 シスターフッド
野口麻衣子は、ライングループで着床前診断について「患者が声をあげる」必要性を示唆する投稿を目にする。同じ境遇にあった木瀬真紀との出会いが患者会設立へとつながる。

第4章 夢の治療か悪魔の技術か
80年代に遺伝子工学は、遺伝病の突然変異の場所を次々に特定。その突然変異をもつ胚を排除することで、遺伝病の連鎖は断ち切れる。が、障害者団体から強烈な反対運動が起こる。

第5章 小児科医も反対の陣営に加わる
障害者団体、女性団体に続いて日産婦でストッパーの役割を担ったのが小児科医だった。東京女子医大の齋藤加代子は、名古屋市立大学の申請を認めるのは「日本の恥」だと主張した。

第6章 障害者の皆さん、お願いします!
これまで表に出ることがなかった遺伝病の当事者が発言を始める。27歳の妻は、筋強直性ジストロフィーの患者で着床前診断を望んでいた。彼女の必死の懇願は果たして届くか?

第7章 薫の心の氷が溶ける
受け入れられなかった我が子と病院を受け入れる原動力になったのは、こども医療センターの小児科医黒澤健司の献身的な医療だった。産科の山中美智子への感情もかわっていく。

第8章 慟哭のアンケート
野口と木瀬は、患者会の設立と同時並行で野口の申請につける他の患者のアンケートを集めはじめる。集まったアンケートには患者とその家族の赤裸々な現実が記されていた。

第9章 遺伝カウンセラー
野口麻衣子の渾身の申請は非承認となる。通知をうけた野口と木瀬は患者会でも質問書を日産婦に送ることにする。そうした中一人の遺伝カウンセラーと出会う。田村智英子だ。

第10章 天の岩戸は開くか
審査小委員会は、野口・木瀬の患者会の質問書にも「網膜芽細胞腫を適応とすることは厳しい」と返答する予定だった。が、上部の倫理委員会で山中美智子が規制見直しの口火を切る。

第11章 運命の倫理委員会
緩和か規制維持か? 異例の臨時倫理委員会が招集された。聖路加国際病院の山中美智子と東京女子医大の松尾真理・神奈川県立こども医療センターの黒澤健司は議論の火花を散らす。

第12章 16年ぶりの倫理審議会を開く
新理事長の木村正、新倫理委員長の三上幹男は、生殖が専門ではなかった。知らない、ゆえに日産婦を一気に開く方向へと導く。重篤性の新基準を公開で話し合う会の設置が決まる。

第13章 内なる優生思想
優生保護法がなくなり国家の出生への介入はなくなった。だから着床前診断は個人の選択の自由のはずだ。が、一人一人の心の中の差別が集積すれば優生思想になるとの新思潮が……。

第14章 あなたたちは楽しく議論していればいい
倫理審議会開催の2カ月前、長崎で行われた人類遺伝学会。ここで委員にもなった社会学者の柘植あづみは「海外では10年議論した」と発表。10年? 野口はショックをうける。

第15章 その選択は優生思想なのか?
日産婦の執行部は、重篤性の緩和の案を出す。野口や木瀬にとっては追い風の会議だったが、2回目以降がコロナで延期、年齢がぎりぎりの野口はもっとも苦しい時期を迎える。

第16章 夫が出ていく
野口麻衣子が東京の患者会の用事から帰ってくると夫は「もう無理や」と言って出ていってしまった。遺伝カウンセラーの田村智英子は「障害児を持つ夫婦でよくあること」と言う。

第17章 ガーベラの花言葉
肝臓にみつかったがんは、網膜芽細胞腫由来の肝細胞がんだった。野口はただちに切除の手術に入る。着床前診断による妊娠は現実的でなくなったが、野口は申請を取り下げない。

第18章 阻む側の論理
大学教授や新聞記者など組織の中で地位を得て「反対」の発信をしてきた人々は、取材に答えなかった。そうした中で、率直に取材に応じたのが、明治学院大学の柘植あづみだった。

第19章 この病院が好きでした
聖路加に勤めていた山中美智子に、定年の日が近づく。院内の電話をとると他診療科の医師からだった。「会いたいという人が来ている」。25年前にとりあげた一実の母、薫だった。

第20章 かずちゃんがいたから病院も変われたんだね
神奈川県立こども医療センターは、現在も一切の出生前診断が禁じられているのか? 情報公開条例によって、2007年退職直前の山中美智子の懸命の努力が明らかになる。

第21章 それぞれの一歩
遺伝病の人々と障害者たち。過酷な環境の人々がそれでも声をあげたことで、歴史は前に進む。野口の7年越しの承認の話を聞きながら、私は米津知子らとの対話を思い出していた。

あとがき
+ + +
命と引き換えに視力を失うのか
苦悩の連鎖を断つ唯一の方法は『着床前診断』 だが……

命と引き換えに視力を失う残酷な遺伝病「網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)」。
苦悩の連鎖を断つ唯一の方法は『着床前診断』。
が、それはなぜか日本ではできないのだった。
野口麻衣子は我が子とともに
顔と名前をさらしてその理不尽を世に問うことにした。
1970年代に隆盛を極めた「青い芝の会」。
1999年に神奈川県立こども医療センターで生まれた重度のダウン症の女の子。
障害者と遺伝病患者、決して交わらないと思われた
その苦悩と相剋の歴史に、架け橋はかかるのか?

その苦悩と相剋、超克の歴史を描く人間ドラマ

+ + +
【著者プロフィール】
下山進(しもやま・すすむ)
ノンフィクション作家。『アルツハイマー征服』(2023年 角川文庫)を取材するなかで、遺伝病の連鎖を断つ現在の唯一の手段である「着床前診断」が日本では厳しく規制されていることを知った。そこから日本でその扉をあけることになった一人の女性と知り合い、遺伝病当事者・障害者団体・産婦人科医・小児科医ら多方面への取材を重ね、本書をものした。1993年コロンビア大学ジャーナリズムスクール国際報道上級課程修了。2019年3月文藝春秋を退社し独立。著書に、『2050年のメディア』(2023年 文春文庫)、『がん征服』(2024年 新潮社)、『勝負の分かれ目』(2002年 角川文庫)、『持続可能なメディア』(2025年 朝日新書)など。AERAで2ページのコラムを連載中。元慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授、上智大学新聞学科非常勤講師。現聖心女子大学現代教養学部、立教大学社会学部非常勤講師。
現在NHKで放送中の「映像の世紀 バタフライエフェクト」にプロデューサーとして関わる寺園慎一さん。寺園さんが「一気に読み」、その綿密な取材力に「圧倒された」という『命を選ぶ 遺伝病の運命に抗ったある女性の物語』。寺園さんは、このノンフィクションのどこに強く惹かれたのか。

賛成派、反対派、どちらのキャラクターも魅力的で心揺さぶられる

私は長くNHKのドキュメンタリー番組の制作に携わってきました。
制度や国家の論理に翻弄される“ひとりの個人”に寄り添うこと──それはドキュメンタリーの王道であり、私自身が大切にしてきた視点でもあります。
下山進さんの『命を選ぶ 遺伝病の運命に抗ったある女性の物語』は、まさにその王道を真正面から貫いています。一気に読みました。綿密な取材に裏打ちされた説得力に圧倒されました。

この本は、遺伝性の病気を時代に伝えないための医療技術「着床前診断」が日本に導入される30年の過程を描いたノンフィクションです。

賛成派、反対派、どちらもキャラクターが魅力的で、難解な部分もつまずくことなく読み進められました。

特に、1970年代に活動した脳性まひ者の団体「青い芝の会」が、出生前診断の議論にここまで大きな影響を与えていたことは、恥ずかしながら本書で初めて知りました。私も原一男監督のドキュメンタリー『さようならCP』(1972年)をかつて見たことがあり、あの運動の強烈さに衝撃を受けた経験があります。その主張が社会の判断をここまで長く左右してきたことは驚きでした。

NHKのドキュメンタリーでも、この分野はたびたび取り上げられています。私も2000年放送のNスペのシリーズ「世紀を越えて」で「人体改造の衝撃」というドキュメンタリーを作ったことがあります。IPS細胞の前のES細胞発見を取り上げた番組でした。こういう最先端テクノロジーを扱う場合、NHKではだいたいにおいて、“警鐘を鳴らす”のが伝統的な姿勢です。

ドキュメンタリーの宿命みたいなものです。技術の進歩を必ず疑ってかかるというメンタリティーが染みついています。それはそれで一理あるのですが、この番組を作った当時、そのメンタリティーに窮屈さを私は多少感じており、警告するよりも、まずはこの技術の革新性を伝えたいという気持ちで作った記憶があります。

下山さんのこの本は、そうしたドキュメンタリーが定番としてきた考え方を、圧倒的な取材と論理展開で覆しています。「最終的に決めるのは、第三者ではなく当事者自身であるべきだ」というシンプルで強い論理が、読者の心にまっすぐ届きます。

そしてもうひとつ引きつけられたのが、登場人物のキャラクターです。網膜芽細胞腫という遺伝病の連鎖に苦しむ主人公の野口麻衣子さんの一家の物語はもちろん感動的なのですが、最も心揺さぶられたのは、山中美智子医師でした。

山中医師は、神奈川県立こども医療センターの産婦人科医でしたが、この本のもうひとりの主人公篠岡一実(かずみ)ちゃんを薫さんが出産した際の担当医でした。

一実ちゃんは重度のダウン症として生まれてきますが、母親の薫さんは出産までそのことを知らずショックをうけます。そして救命のための緊急手術を両親が拒否するのです。

山中医師が、羊水検査をできなかったのには理由がありました。1976年に神奈川県知事が、「青い芝の会」と一切の出生前診断はしないという覚書を交わしていたからです。

前半では“制度の側”に立つ存在として描かれる山中医師が、後半では着床前診断の緩和を訴える側へと転じていく──その変化が実にドラマチックです。野口家、篠岡家といういわば遺伝病と障害者を象徴するような2つの家族をつなぐ存在として登場するのも、すばらしくドラマ的だと思いました。

保守派の側の人もなかなか魅力的です。そして何よりも、青い芝の会の激烈さです。若い頃の自分なら、彼らの言葉に強く影響を受けていたかもしれない──そう思わせるほどの切実さがありました。その強い主張と、遺伝病の当事者たちの苦悩が、長い時間をかけて少しずつ交わり、変化していく。その過程こそが本書の真骨頂だと感じました。

激しく対立し、到底歩み寄るのが難しいと思えた遺伝病の患者と障害者差別を糾弾する勢力、そして優生思想が複雑に絡み合いながら、明るい兆しが見えるようなエンディング。上質なドキュメンタリーこそが持つ醍醐味です。

医療の進歩、テクノロジーの進歩による変化をポジティブに受け止め、その中で追いついていない制度を整えていくことを訴えるというのが、私たちメディアの使命であると痛感しました。

[書き手]寺園慎一

1982年NHK入局。2024年NHKを定年退職。主にドキュメンタリー番組を制作してきた。現在、外部プロデューサーとして「映像の世紀バタフライエフェクト」の制作を担当。「映像の世紀バタフライエフェクト」は、2022年第70回菊池寛賞を、第60回ギャラクシー賞特別賞を受賞。これまでに制作した主な番組は、「ハーバード白熱教室」「君が僕の息子について教えてくれたこと」「東京リボーン」「AIでよみがえる美空ひばり」「東京ブラックホール」「映像記録・関東大震災」「山口一郎・うつと生きる」など。
命を選ぶ 遺伝病の運命に抗ったある女性の物語 / 下山 進
命を選ぶ 遺伝病の運命に抗ったある女性の物語
  • 著者:下山 進
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:単行本(320ページ)
  • 発売日:2026-05-01
  • ISBN-10:4396618697
  • ISBN-13:978-4396618698
内容紹介:
プロローグ 光る眼野口麻衣子の右目は義眼だ。生後4カ月で網膜にできたがんのために摘出した。それが遺伝する病気とはっきりとはわからず第二子七誠を産む。生後3週間で七誠の左目が光る。… もっと読む
プロローグ 光る眼
野口麻衣子の右目は義眼だ。生後4カ月で網膜にできたがんのために摘出した。それが遺伝する病気とはっきりとはわからず第二子七誠を産む。生後3週間で七誠の左目が光る。

第1章 手がなくても足がなくても産む病院
七誠の生まれる17年前、神奈川の県立病院であるダウン症の女の子が生まれる。出産時にダウン症とその合併症を初めて告げられた母親は「なぜ知らせてくれなかったのか」と問う。
第2章 青い芝の会
山中美智子が羊水検査をできなかったのには理由があった。県は障害者団体「青い芝の会」の激しい抗議活動に屈する形で「一切の出生前診断をしない」と76年に約束したのだった。

第3章 シスターフッド
野口麻衣子は、ライングループで着床前診断について「患者が声をあげる」必要性を示唆する投稿を目にする。同じ境遇にあった木瀬真紀との出会いが患者会設立へとつながる。

第4章 夢の治療か悪魔の技術か
80年代に遺伝子工学は、遺伝病の突然変異の場所を次々に特定。その突然変異をもつ胚を排除することで、遺伝病の連鎖は断ち切れる。が、障害者団体から強烈な反対運動が起こる。

第5章 小児科医も反対の陣営に加わる
障害者団体、女性団体に続いて日産婦でストッパーの役割を担ったのが小児科医だった。東京女子医大の齋藤加代子は、名古屋市立大学の申請を認めるのは「日本の恥」だと主張した。

第6章 障害者の皆さん、お願いします!
これまで表に出ることがなかった遺伝病の当事者が発言を始める。27歳の妻は、筋強直性ジストロフィーの患者で着床前診断を望んでいた。彼女の必死の懇願は果たして届くか?

第7章 薫の心の氷が溶ける
受け入れられなかった我が子と病院を受け入れる原動力になったのは、こども医療センターの小児科医黒澤健司の献身的な医療だった。産科の山中美智子への感情もかわっていく。

第8章 慟哭のアンケート
野口と木瀬は、患者会の設立と同時並行で野口の申請につける他の患者のアンケートを集めはじめる。集まったアンケートには患者とその家族の赤裸々な現実が記されていた。

第9章 遺伝カウンセラー
野口麻衣子の渾身の申請は非承認となる。通知をうけた野口と木瀬は患者会でも質問書を日産婦に送ることにする。そうした中一人の遺伝カウンセラーと出会う。田村智英子だ。

第10章 天の岩戸は開くか
審査小委員会は、野口・木瀬の患者会の質問書にも「網膜芽細胞腫を適応とすることは厳しい」と返答する予定だった。が、上部の倫理委員会で山中美智子が規制見直しの口火を切る。

第11章 運命の倫理委員会
緩和か規制維持か? 異例の臨時倫理委員会が招集された。聖路加国際病院の山中美智子と東京女子医大の松尾真理・神奈川県立こども医療センターの黒澤健司は議論の火花を散らす。

第12章 16年ぶりの倫理審議会を開く
新理事長の木村正、新倫理委員長の三上幹男は、生殖が専門ではなかった。知らない、ゆえに日産婦を一気に開く方向へと導く。重篤性の新基準を公開で話し合う会の設置が決まる。

第13章 内なる優生思想
優生保護法がなくなり国家の出生への介入はなくなった。だから着床前診断は個人の選択の自由のはずだ。が、一人一人の心の中の差別が集積すれば優生思想になるとの新思潮が……。

第14章 あなたたちは楽しく議論していればいい
倫理審議会開催の2カ月前、長崎で行われた人類遺伝学会。ここで委員にもなった社会学者の柘植あづみは「海外では10年議論した」と発表。10年? 野口はショックをうける。

第15章 その選択は優生思想なのか?
日産婦の執行部は、重篤性の緩和の案を出す。野口や木瀬にとっては追い風の会議だったが、2回目以降がコロナで延期、年齢がぎりぎりの野口はもっとも苦しい時期を迎える。

第16章 夫が出ていく
野口麻衣子が東京の患者会の用事から帰ってくると夫は「もう無理や」と言って出ていってしまった。遺伝カウンセラーの田村智英子は「障害児を持つ夫婦でよくあること」と言う。

第17章 ガーベラの花言葉
肝臓にみつかったがんは、網膜芽細胞腫由来の肝細胞がんだった。野口はただちに切除の手術に入る。着床前診断による妊娠は現実的でなくなったが、野口は申請を取り下げない。

第18章 阻む側の論理
大学教授や新聞記者など組織の中で地位を得て「反対」の発信をしてきた人々は、取材に答えなかった。そうした中で、率直に取材に応じたのが、明治学院大学の柘植あづみだった。

第19章 この病院が好きでした
聖路加に勤めていた山中美智子に、定年の日が近づく。院内の電話をとると他診療科の医師からだった。「会いたいという人が来ている」。25年前にとりあげた一実の母、薫だった。

第20章 かずちゃんがいたから病院も変われたんだね
神奈川県立こども医療センターは、現在も一切の出生前診断が禁じられているのか? 情報公開条例によって、2007年退職直前の山中美智子の懸命の努力が明らかになる。

第21章 それぞれの一歩
遺伝病の人々と障害者たち。過酷な環境の人々がそれでも声をあげたことで、歴史は前に進む。野口の7年越しの承認の話を聞きながら、私は米津知子らとの対話を思い出していた。

あとがき
+ + +
命と引き換えに視力を失うのか
苦悩の連鎖を断つ唯一の方法は『着床前診断』 だが……

命と引き換えに視力を失う残酷な遺伝病「網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)」。
苦悩の連鎖を断つ唯一の方法は『着床前診断』。
が、それはなぜか日本ではできないのだった。
野口麻衣子は我が子とともに
顔と名前をさらしてその理不尽を世に問うことにした。
1970年代に隆盛を極めた「青い芝の会」。
1999年に神奈川県立こども医療センターで生まれた重度のダウン症の女の子。
障害者と遺伝病患者、決して交わらないと思われた
その苦悩と相剋の歴史に、架け橋はかかるのか?

その苦悩と相剋、超克の歴史を描く人間ドラマ

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【著者プロフィール】
下山進(しもやま・すすむ)
ノンフィクション作家。『アルツハイマー征服』(2023年 角川文庫)を取材するなかで、遺伝病の連鎖を断つ現在の唯一の手段である「着床前診断」が日本では厳しく規制されていることを知った。そこから日本でその扉をあけることになった一人の女性と知り合い、遺伝病当事者・障害者団体・産婦人科医・小児科医ら多方面への取材を重ね、本書をものした。1993年コロンビア大学ジャーナリズムスクール国際報道上級課程修了。2019年3月文藝春秋を退社し独立。著書に、『2050年のメディア』(2023年 文春文庫)、『がん征服』(2024年 新潮社)、『勝負の分かれ目』(2002年 角川文庫)、『持続可能なメディア』(2025年 朝日新書)など。AERAで2ページのコラムを連載中。元慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授、上智大学新聞学科非常勤講師。現聖心女子大学現代教養学部、立教大学社会学部非常勤講師。

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