書評

『わからないままの民藝』(作品社)

  • 2026/06/03
わからないままの民藝 / 朝倉 圭一
わからないままの民藝
  • 著者:朝倉 圭一
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(272ページ)
  • 発売日:2024-07-02
  • ISBN-10:4867930334
  • ISBN-13:978-4867930335
内容紹介:
わからなくて、愛おしい。飛騨高山の工藝店「やわい屋」の店主が“新時代の民藝”の姿を生き生きと綴った、これまでにない、新しい民藝エッセイ。「わからないまま」は、「わかる」や、「わか… もっと読む
わからなくて、愛おしい。
飛騨高山の工藝店「やわい屋」の店主が“新時代の民藝”の姿を生き生きと綴った、これまでにない、新しい民藝エッセイ。

「わからないまま」は、「わかる」や、「わかった」よりもずっと信頼できる。
なんとなく、且つ、強く、そう感じている僕ですが、この本を読んでそれに自信が持てました。
生活者の体感と、博識な言語世界を縦横無尽に旅して、独特な感性で見つめるような朝倉さんの思索や活動は、それ自体が民藝のよう。さすが、民藝運動の父・柳宗悦が「旅の心を誘うところ」と言った飛騨国に生まれ育った人です。
――星野概念(精神科医など)

◎カヴァー写真:表萌々花

********

【目次】
はじめに
第1章 民藝の百年を遡る
……百年前の若き日の民藝の先達が見つめた先にあった日常について
第2章 飛騨高山と観光と民藝運動
……飛騨地域における民藝運動の歴史について
第3章 工藝店「やわい屋」の物語
……自身の半生と「やわい屋」における日々について
第4章 現代に息づく民藝
……これからの時代を共に歩む親しい同行者としての民藝について
おわりに

人と出会い夢の暮らし実現


民藝を商う、民藝を求める。

店もお客も、器や道具を通して、お互いの考え、気持ちを伝えたくなるのが民藝。骨董(こっとう)趣味とは一線を画している。

朝倉圭一は、岐阜県北部高山市の中心から車で30分ほど離れた集落に、民藝店「やわい屋」を営む。築後、150年の古民家を移築し住居兼店舗を開いている。経済効率よりは、自らが惚(ほ)れ込んだ空間を手に入れ、そこで生業を営み、暮らすことの幸福が伝わってくる。飛騨では、「支度をする」ことを「やわいをする」と言うのだという。

本書の白眉は、第3章「工藝店『やわい屋』の物語」にある。高山生まれの朝倉は、30歳のアルバイトだった。アパート、壁紙や床やテーブルに違和感を抱いたところから、すべては始まった。単に民藝店を開くのであれば、手っ取り早い道はあったろう。けれど、古民家を購入して改装するのではなく、新たな土地を求め、移築する道へと導かれていく。元警察官で引退後、不動産屋をはじめた白栗(はくぐり)さん、古民家を手がけてきた現代の匠(たくみ)、上町(かんまち)さん。受け入れてくれた集落の人々。探し始めてから2年。夢の実現へと一歩一歩近づいていく様子、「やわいをする」姿が活写されていて、どきどきするくらい面白い。

第1章の「民藝の百年を遡(さかのぼ)る」は、独特の視点が明解に打ち出される。単に歴史をたどるのではない。「当たり前」の暮らしを送るには、どんな考えが必要か。夢の実現には、現実の制約を乗り越える精神力が必要だ。「社会の一員として周囲と交わり、良好な関係を結びつつ、迷惑をかけ他者による迷惑を許して、心穏やかに平穏な心持ちで暮らすこと」。資金面や土地の選定、改装とその材に至るまで、毅然(きぜん)たる生き方を貫いている。しかも柔軟であろうとする。だからこそ偶然の出会いに恵まれる。

著者は、民藝に惚れている。しかも、言葉の人である。よく調べ、よく考え、よく書く。ここには理想と生活が示されている。
わからないままの民藝 / 朝倉 圭一
わからないままの民藝
  • 著者:朝倉 圭一
  • 出版社:作品社
  • 装丁:単行本(272ページ)
  • 発売日:2024-07-02
  • ISBN-10:4867930334
  • ISBN-13:978-4867930335
内容紹介:
わからなくて、愛おしい。飛騨高山の工藝店「やわい屋」の店主が“新時代の民藝”の姿を生き生きと綴った、これまでにない、新しい民藝エッセイ。「わからないまま」は、「わかる」や、「わか… もっと読む
わからなくて、愛おしい。
飛騨高山の工藝店「やわい屋」の店主が“新時代の民藝”の姿を生き生きと綴った、これまでにない、新しい民藝エッセイ。

「わからないまま」は、「わかる」や、「わかった」よりもずっと信頼できる。
なんとなく、且つ、強く、そう感じている僕ですが、この本を読んでそれに自信が持てました。
生活者の体感と、博識な言語世界を縦横無尽に旅して、独特な感性で見つめるような朝倉さんの思索や活動は、それ自体が民藝のよう。さすが、民藝運動の父・柳宗悦が「旅の心を誘うところ」と言った飛騨国に生まれ育った人です。
――星野概念(精神科医など)

◎カヴァー写真:表萌々花

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【目次】
はじめに
第1章 民藝の百年を遡る
……百年前の若き日の民藝の先達が見つめた先にあった日常について
第2章 飛騨高山と観光と民藝運動
……飛騨地域における民藝運動の歴史について
第3章 工藝店「やわい屋」の物語
……自身の半生と「やわい屋」における日々について
第4章 現代に息づく民藝
……これからの時代を共に歩む親しい同行者としての民藝について
おわりに

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初出メディア

東京新聞

東京新聞 2024年8月17日 / 中日新聞:2024年8月18日

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