書評
『椅子クラフトはなぜ生き残るのか』(左右社)
「クラフト」は手作りで少量生産を特徴とする工藝文化。日本では民藝に当たるだろう。陶磁器や木製品、手芸品、装飾品などのクラフツは生産性が低く労働集約的であるため機械化がもたらした大量生産によって駆逐された。それでも一部が大企業に伍して生き延びてきた謎を、「椅子クラフト」を例に解き明かす。
クラフトはハンドメイドであるため、資本設備や新技術で生産を増やすのには困難が伴う。雇用のみ多くて生産性が低く、製作収入だけでは赤字になる宿命にある。つまり「椅子クラフト」は経済合理性からすれば淘汰されて不思議でない不振産業なのだが、著者は「補助」が経済以外の「社会文化的助成」として行われていると主張する。
フォーマルな企業組織は経済合理性を追求して収益を上げるが、家族やコミュニティーをないがしろにしてきた。一方、京都の喫茶店・進々堂のベンチと大テーブル(黒田辰秋作)や高齢者が腰掛けたくなる街角のベンチには、「座る」機能だけでなく不特定多数がゆるやかに交流しインフォーマルなつながりをうみだす余白がある。民藝の現在を社会経済学から読み解く一冊である。
クラフトはハンドメイドであるため、資本設備や新技術で生産を増やすのには困難が伴う。雇用のみ多くて生産性が低く、製作収入だけでは赤字になる宿命にある。つまり「椅子クラフト」は経済合理性からすれば淘汰されて不思議でない不振産業なのだが、著者は「補助」が経済以外の「社会文化的助成」として行われていると主張する。
フォーマルな企業組織は経済合理性を追求して収益を上げるが、家族やコミュニティーをないがしろにしてきた。一方、京都の喫茶店・進々堂のベンチと大テーブル(黒田辰秋作)や高齢者が腰掛けたくなる街角のベンチには、「座る」機能だけでなく不特定多数がゆるやかに交流しインフォーマルなつながりをうみだす余白がある。民藝の現在を社会経済学から読み解く一冊である。
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