書評

『仏像の光と闇』(水王舎)

  • 2019/06/25
仏像の光と闇 / 宮澤やすみ
仏像の光と闇
  • 著者:宮澤やすみ
  • 出版社:水王舎
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(224ページ)
  • 発売日:2019-02-14
  • ISBN:486470113X
内容紹介:
奈良時代の最盛期であり東大寺が築かれた天平から仏教思想が
一気に広まる鎌倉時代までの間は混迷を極めており、
呪いや怨霊、ついには末法思想まで広まり、厭世観漂う混沌の時代であった。
そういった視点で仏像を眺めると見えてくる世界がある!
早稲田大学オープンカレッジで長期にわたり人気の講座がついに書籍化!
聖なる美仏が邪淫に汚れ、発動する「呪いの装置」とは?
気鋭の神仏研究家が解き明かす、知られざる世界とは!
人間の心の闇(怨念や愛欲、名誉欲など)にスポットを当て、
日本人の宗教観と信仰の裏表に迫り、
仏像ブーム、パワースポットブームに一石を投じる!

仏像は呪力で敵を滅ぼす兵器でもあったのか

仏像とは仏教の「仏さま」の姿を造形したものである。仏さまは私たち衆生を救ってくれる、慈悲深き超越者である。だから仏像を解説する本は、仏さまの種類や特徴を説きながら、いかにそれが美しくすばらしい存在かを教えてくれる。

本書はまったく違う。「呪い」をキーワードとして、仏さまを語る。本書によれば、仏像とは呪力によって対抗者に打撃を与え、はては滅ぼしてしまう装置である。テクノロジーとは無縁であった過去において、それは最新鋭の兵器でもあった。

そうかなるほど、と納得せざるを得ない。ぼくが研究している鎌倉時代中期以降、承久の乱で敗北を喫した朝廷は軍事力を幕府に取り上げられた。それでも、自己の利益の伸長を企てる寺社の暴力集団(僧兵や神人(じにん))は、遠慮会釈なく朝廷に攻撃を仕掛けてくる。このとき朝廷はどう対処したか。仏に祈るのだ。高僧を呼び集め、仏像や仏画を置き、壇を組む。護摩を焚(た)き、経典を読咒(どくじゅ)する。

古代からの仏教の理念といえば「鎮護国家」。だからぼくは、非常時には法を修して、「平和が回復しますように」と祈りを捧(ささ)げるのだと思っていた。甘い! 朝廷は法会を催して仏像の「呪い」パワーを具現化し、向かってくる敵を積極的に討伐しようとしていたのだ!

仏像は仏教だけでなく、日本に存在した天つ神、国つ神とも融合し、敵を打ち倒すパワー、加えて現世利益の能力を獲得していった。たとえばインドの破壊神マハーカーラは出雲の大国主、三輪の大物主、日吉の大己貴(おおなむち)と同体となった結果、福の神「大黒さま」になった。本書はこのような仏の変容を時間軸にそって語り尽くす。まさに「光と闇」。仏像の本当の姿を知りたければ必読である。
仏像の光と闇 / 宮澤やすみ
仏像の光と闇
  • 著者:宮澤やすみ
  • 出版社:水王舎
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(224ページ)
  • 発売日:2019-02-14
  • ISBN:486470113X
内容紹介:
奈良時代の最盛期であり東大寺が築かれた天平から仏教思想が
一気に広まる鎌倉時代までの間は混迷を極めており、
呪いや怨霊、ついには末法思想まで広まり、厭世観漂う混沌の時代であった。
そういった視点で仏像を眺めると見えてくる世界がある!
早稲田大学オープンカレッジで長期にわたり人気の講座がついに書籍化!
聖なる美仏が邪淫に汚れ、発動する「呪いの装置」とは?
気鋭の神仏研究家が解き明かす、知られざる世界とは!
人間の心の闇(怨念や愛欲、名誉欲など)にスポットを当て、
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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2019年6月9日号

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