書評
『高山寺の美術: 明恵上人と鳥獣戯画ゆかりの寺』(吉川弘文館)
明恵上人と高山寺の寺宝
日本最古の漫画とも称される国宝絵巻「鳥獣人物戯画(鳥獣戯画)」を所蔵する京都・高山寺。明恵上人(1173~1232)が再興して以来、800年以上にわたり守り伝えてきた数多くの美術作品を紐解き、多面的な信仰世界に迫る。同寺に伝わる文化財は、建造物を含む国宝が8件、重要文化財は30件を超える。「高山寺典籍文書類」として一括して重文指定されている聖教、文書類は9千点以上ある。
優れた文化財が生み出され、集積されてきたのは明恵上人の存在に拠るところが大きく、特徴的な寺宝の在り方をしているという。そう説明する編者の土屋貴裕・東京国立博物館主任研究員は、「高山寺の美術を考えることは、明恵の信仰の在り方に迫るということでもある」と語る。
三部構成で明恵上人と同寺を巡る美術が論じられる。第一部は、明恵上人が直接造形化に携わったとされる作品を取り上げる「明恵上人の信仰と造形」。第二部は、明恵上人を取り巻く同寺の環境がどのような作品を生み出したのかを考察する「高山寺という場と明恵上人」。第三部は、同寺に伝わる2つの国宝絵巻、「華厳宗祖師絵伝」と「鳥獣戯画」を取り上げる「高山寺の国宝絵巻」。
土屋氏のほか、国立博物館4館の研究員ら6人が歴史を踏まえながら、様々な角度から作品の魅力を伝え、同寺に生き続ける明恵上人の精神を掘り下げる。
[書き手] 板倉 純平(いたくら じゅんぺい・記者)
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