書評

『ミュージカル映画が《最高》であった頃』(国書刊行会)

  • 2026/06/24
ミュージカル映画が《最高》であった頃 / 喜志 哲雄
ミュージカル映画が《最高》であった頃
  • 著者:喜志 哲雄
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(312ページ)
  • 発売日:2024-09-23
  • ISBN-10:4336074828
  • ISBN-13:978-4336074829
内容紹介:
『ジャズ・シンガー』から『ラ・ラ・ランド』まで――1960年代より本場ブロードウェイで舞台・映画を観続けてきた筋金入りの演劇研究家が〈ミュージカル映画の黄金時代〉を語りつくす。ミュ… もっと読む
『ジャズ・シンガー』から『ラ・ラ・ランド』まで――

1960年代より本場ブロードウェイで舞台・映画を観続けてきた筋金入りの演劇研究家が〈ミュージカル映画の黄金時代〉を語りつくす。

ミュージカル映画の始祖『ジャズ・シンガー』から、フレッド・アステア、ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドの傑作の数々、そして『シカゴ』『イントゥ・ザ・ウッズ』『ラ・ラ・ランド』といったミュージカル映画の未来を担う作品まで徹底分析!

【目次】
第1章 ミュージカル映画の誕生――『ジャズ・シンガー』
第2章 ミュージカル映画の自己投影性――バズビー・バークリー
第3章 正統としてのフレッド・アステア
第4章 ジュディ・ガーランドの仕事と人生
第5章 ジーン・ケリーの実験
第6章 異端としてのフレッド・アステア
第7章 ミュージカル映画の未来
解説 喜志哲雄の体験的ミュージカル論 若島正

言語芸術としての価値吟味

ミュージカルには、偏愛を呼び覚ます力がある。

舞台ではキャストを変えた上演も行われ、観客は何度も劇場に通う。映画は、映像を購入して、同じ作品を繰り返し観ることができるようになって久しい。強烈な魅力がある。

英文学者の喜志哲雄は、ハリウッドで作られたミュージカル映画の1940年代、50年代を「《最高》であった頃」としている。ならば、この時代に作られた名作を網羅して扱っているかというと、そうではない。

喜志の関心は、フレッド・アステア、ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドに絞られている。アステアの「トップ・ハット」、ケリーの「雨に唄えば」、ガーランドの「オズの魔法使(つかい)」のような代表作ばかりではない。この3人については、お互いの共演作を含めて、ほぼすべての作品の価値を吟味し、その独自性を明らかにしようとしている。

一方、喜志はそれぞれの作品の難点を指摘することをためらわない。その基準も確固たるものだ。ミュージカルを歌と踊りのエンターテインメントとして片づけるのではなく、ストレートプレイ(いわゆる演劇)と同様、言語芸術としての価値があるかを検証する。全体のシナリオのなかで、歌と踊りが、しっくりと溶け込んでいるかが重要だと考えている。そのため、歌詞と曲の持つ意味も、なおざりにせず、個々の映画の筋を執拗(しつよう)なまでに語っている。文学性を重く見ている。例外は、喜志が晩年のガーランドのコンサートをカーネギーホールで生で観た経験を語る第四章の冒頭だろう。

私がひかれたのは、アステアとジンジャー・ロジャーズが共演した10本について熱く語る第三章である。アステアを「幼稚な芸術にすぎなかったミュージカル映画を大人の鑑賞に堪えるものにした」と評価し、最も重要な協力者としてロジャーズを位置づける。歴史的な意味ばかりではない。銀幕のなかで踊るふたりへの偏愛が感じられた。
ミュージカル映画が《最高》であった頃 / 喜志 哲雄
ミュージカル映画が《最高》であった頃
  • 著者:喜志 哲雄
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(312ページ)
  • 発売日:2024-09-23
  • ISBN-10:4336074828
  • ISBN-13:978-4336074829
内容紹介:
『ジャズ・シンガー』から『ラ・ラ・ランド』まで――1960年代より本場ブロードウェイで舞台・映画を観続けてきた筋金入りの演劇研究家が〈ミュージカル映画の黄金時代〉を語りつくす。ミュ… もっと読む
『ジャズ・シンガー』から『ラ・ラ・ランド』まで――

1960年代より本場ブロードウェイで舞台・映画を観続けてきた筋金入りの演劇研究家が〈ミュージカル映画の黄金時代〉を語りつくす。

ミュージカル映画の始祖『ジャズ・シンガー』から、フレッド・アステア、ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドの傑作の数々、そして『シカゴ』『イントゥ・ザ・ウッズ』『ラ・ラ・ランド』といったミュージカル映画の未来を担う作品まで徹底分析!

【目次】
第1章 ミュージカル映画の誕生――『ジャズ・シンガー』
第2章 ミュージカル映画の自己投影性――バズビー・バークリー
第3章 正統としてのフレッド・アステア
第4章 ジュディ・ガーランドの仕事と人生
第5章 ジーン・ケリーの実験
第6章 異端としてのフレッド・アステア
第7章 ミュージカル映画の未来
解説 喜志哲雄の体験的ミュージカル論 若島正

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初出メディア

東京新聞

東京新聞 2024年12月22日

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