長らく品切で、復刊が期待されていた林陸朗・鈴木靖民編『天平諸国正税帳』(1985年、現代思潮社)を全面改訂。
【正税帳(収支決算書)からわかること】
●奈良時代の全27通の正税帳 正税帳は毎年国ごとに作成され、中央政府に提出されたその国の一年間の正税(田租や出挙利稲の蓄積による穎稲・稲穀)の収支決算書で、今日でいえば都道府県の一般会計の歳入歳出決算書にあたる。平城京左京と20ヶ国の計27通の正税帳(大税帳5・郡稲帳3・正税出挙帳1を含む)の断簡が正倉院文書として伝来する。すべて天平期(730~739年)のもので、本書に全27通を翻刻・影印で収録。
●全国規模での地方財政 27通の内訳は、畿内4、東海道6、北陸道4、山陰道3、山陽道4、南海道3、西海道3で、東山道を除いて全国に分散しており(本内容見本表紙の地図参照)、古代社会の指標の一つとなる天平期の地方財政の実情を全国規模で知ることができる。同時に、地域間や年度間の比較もできる貴重な史料群。
●交通や産業・流通の実情 各国内を通過した使者・防人のほか、平城京に貢進された全国各地の特産物から、当時の交通や産業・流通の実情を知ることができる。
●モノの価格や度量衡、神社の存在まで 貢納物や材料の価格、その度量衡、貢納物の製造手段、さらには各国の年間行事とその経費・従事者、国司や郡司の構成、郡ごとの正倉の種類と数、天平期の神社の存在など、地方情勢を伝える。
●正史を補完し、法令の運用実態も 奈良時代の正史『続日本紀』の記事と比較することで、正史を補完することができるばかりでなく、地方における法令の運用実態までもがわかる。
●天然痘での被害対策や被害状況 近年、災害史の観点から注目されるのは、天平期の天然痘のパンデミックにおける各地の様相で、救済対策としての公費投入(正税支出)や死亡者・困窮者への租税減免措置や、各地の被害状況も推測される。
●さまざまな分野で活用できる史料 多方面の記載をもつ正税帳の記事は、歴史学・考古学に限らず、文学・経済史・法制史・災害史・建築史など、さまざまな分野での活用が期待され、諸分野での研究が活発となる。
【翻 刻】
1厳密に校訂した翻刻本文
2最新成果を踏まえた脚註
3語句解説
4詳細な史料語句索引
5正倉院文書(正税帳)断簡整理・表裏対照表も併載
【影 印】
1正税帳全27点の写真
2カラー口絵5点:正税帳類全27点から5点を厳選し主要部分を収録
3透過光写真4点を収録:影印本文では確認できなかった箇所の4点について透過光写真を併載。
【2分冊】
翻刻編・影印編は別冊とし、行番号を付しているので、2冊を並べて瞬時に見比べることができる。
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