〈「わたし」とは確固とした個人であるどころか、無定形な多様体で、自分自身にとっても捉えどころがない。21世紀の今でこそ自然に思われるこの考えを、ペソアははるか以前に先取りしていた。自分とは別人格の〈異名者〉たちを案出し、たったひとりで宇宙全体を体現するようなこの不思議な人物は、どのような人生を送り、何を考えていたのだろうか。〉(「あとがき」より)
70もの人格を作り作品を書き分け、没後に2万7500点以上の草稿が発見されたポルトガルの国民詩人ペソア。この20世紀の巨人の生涯と言葉を丹念にたどり、豊富な引用と貴重な図版を合わせて、稀有な詩人の魅力の全貌に迫る。ペソア入門としても最適な、本邦初、待望の本格評伝!
【著者略歴】
澤田 直(さわだ・なお)
1959年、東京生まれ。パリ第一大学大学院哲学科博士課程修了。現在、立教大学文学部教授(フランス文学)。
著書に『〈呼びかけ〉の経験:サルトルのモラル論』(人文書院)、『新・サルトル講義:未完の思想、実存から倫理へ』(平凡社)、『ジャン=リュック・ナンシー:分有のためのエチュード』(白水社)、『サルトルのプリズム:二十世紀フランス文学・思想論』(法政大学出版局)など。
訳書にフィリップ・フォレスト『洪水』(共訳、河出書房新社)、『シュレーディンガーの猫を追って』(共訳、河出書房新社)、
『夢、ゆきかひて』(共訳、白水社)、『荒木経惟 つひのはてに』(共訳、白水社)、『さりながら』(白水社)、ミシェル・ウエルベック『ショーペンハウアーとともに』(国書刊行会)、J-P・サルトル『真理と実存』『言葉』(以上、人文書院)、『自由への道』全6巻(共訳、岩波書店)、『家の馬鹿息子:ギュスターヴ・フローベール論』4巻、5巻(共訳、人文書院)、フェルナンド・ペソア『新編 不穏の書、断章』(平凡社)、海外詩文庫『ペソア詩集』(思潮社)などがある。
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