『悪魔の中世』(河出書房新社)
谷川 渥
ローマを含む地中海沿岸一帯に広まった大母神信仰の母胎であった。至高にして
普遍の原理であるイシスは、また大旅行者でもあった。著者は、イシス信仰の
痕跡を、フランス、イギリス、ゲルマニアなどヨーロッパ各地に、そして遥か
中国・インドにまで求め、驚くべき展望、あるいはむしろ展望の逆転の中に、古
代から中世、否、近世にまで至る、人間の信仰と想像力の大いなる角逐ないし協
力を見る。幻想の東洋と西欧の夢想が交錯するあやかしの精神史。
膨大な資料を渉猟し、美学、考古学、比較宗教学などを駆使して、神話の伝承
の形で現れる知のパースペクティヴの転倒を試みた本書は、『アベラシオン』
『アナモルフォーズ』に続いて、異端の美術史家ユルギス・バルトルシャイティ
ス「逸脱の遠近法」三部作の最後を飾る。
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