井上哲次郎と「国体」の光芒:官学の覇権と〈反官〉アカデミズム / 杉山 亮
井上哲次郎と「国体」の光芒:官学の覇権と〈反官〉アカデミズム
  • 著者:杉山 亮
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(324ページ)
  • 発売日:2023-03-25
  • ISBN-10:4560094918
  • ISBN-13:978-4560094914
内容紹介:
学者たちの戦争、そして帝国の崩壊加藤弘之が創り上げ、井上哲次郎に継承された官学アカデミズムは、煩悶青年が社会問題化した日露戦後、生命主義に傾倒していく。しかし、国体論に「無意識… もっと読む
学者たちの戦争、そして帝国の崩壊

加藤弘之が創り上げ、井上哲次郎に継承された官学アカデミズムは、煩悶青年が社会問題化した日露戦後、生命主義に傾倒していく。
しかし、国体論に「無意識」を取り入れる試みは、東京帝大の心理学者、福来友吉の念写実験が巻き起こした社会的混乱によって絶たれ、官学アカデミズムは歴史へと回帰することになる。
他方、大正デモクラシーの潮流のなかで国体を語る裾野は広がっていく。
早稲田の漢学を中心とした私学勢は、南北朝正閏問題や宮中某重大事件、大東文化学院の運営をめぐって、官学アカデミズムが彫琢した国体論に揺さぶりをかける。
とりわけ、大東文化学院の覇権を争う戦いは熾烈をきわめた。漢学教育の再興を目指す早稲田と、それを封じようとする官学アカデミズムの争いは、「暴力専門家」も動員しながら、井上の不敬事件やテロをも誘発していく。
あとの時代から見ると、「国体」と聞くだけで、狂信的な雰囲気が漂うが、そこには「国体論的公共性」とも呼ばれる広範な討議空間もあった。暴力に覆われる前の思想空間を辿り直す稀有な試み。

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