『モードの体系』(みすず書房)
鷲田 清一
ファッション雑誌の言語をあざやかに分析。文化記号論のバイブルとなった古典的著作。
モードとは、予想外の動きを示すくせに、しかも規則的なもの、つねに新しいものでありながら、知的な理解を越えたものではない――モードがいつも心理学者や美学者や社会学者たちの関心を惹きつづけてきたのももっともであろう。
しかしロラン・バルトがモードを採りあげたのは、まったく新しい視点からであった。
彼はファッション・ジャーナリズムによる記述を通じてモードを捉え、モードの中に在る意味作用の体系を明るみへ出す。モードはここにはじめて本格的に意味論的分析を施された。その問題とは――人間は自分たちの衣服とことばから、どのようにして意味をつくり上げるのか?
この問いへの解答の試みにおいて著者は、現代の人間学にとっての最大の関心事のひとつに遭遇した。それは言語分析を拡大し、文化的現象全般にまで拡張するということ。すなわち本書は応用記号学開拓の、最初の試行のひとつなのである。
『モードの体系』は、具体的には『現代のモード雑誌にことばとして表現されているモードの記号体系』といえよう。バルトの前著『記号学の原理』の実例としてみのったもので、学究的な論調と「はなやかな」アフォリスム的発想のいりまじった魅力的な思想を展開する野心的な大著である。
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