ポール・G・フォーコウスキー『微生物が地球をつくった -生命40億年史の主人公-』(青土社)、ニコラス・P・マネー『生物界をつくった微生物』(築地書館)
島田 雅彦
植物の葉緑体はバクテリア。
生きものは、微生物でできている!
何世紀もの間、我々人類は自分が目にした動物や植物をもとにして、生物の世界を描いてきた。顕微鏡が微生物の隠れた世界を垣間見せてくれたが、微生物世界の真の大きさとその重要性に光が当てられたのは、ここ10年ばかりのことである。
人体、樹木、海水や海底の泥、土壌や湖沼や河川、大気などのすべてが、微生物に満ちあふれている。しかも、その活動は地球の歴史とともに、生物圏を形作り、維持するのに必要不可欠なものなのだ。微生物は、我々自身にとっても必須の存在であり、食べ物を消化するという点で膨大な数の微生物に頼っているのだ。
著者のニコラス・マネーは、地球上の生物に対する考え方を、ひっくり返さなければならないと説く。葉緑体からミトコンドリアまで、生物界は微生物の集合体であり、動物や植物は、微生物が支配する生物界のほんの一部にすぎないのだ。
著者は単細胞の原核生物や藻類、菌類、バクテリア、古細菌、ウイルスなど、その際立った働きを紹介しながら、我々を驚くべき生物の世界へ導いてくれる。また、繊細で美しい植物プランクトンから、空気中の菌の胞子や土の中にいる空中窒素固定細菌、海底の黒い噴出孔にくらす極限環境微生物の古細菌に至るまで、地球上のあらゆる場所に微生物が満ちあふれていることも教えてくれる。
肉眼では見えない小さな生物の大きな世界へ想像の翼をひろげよう。
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