書評
『無力な天使たち』(国書刊行会)
異質な49人が入り組む世界
どうやら世界は荒廃してしまった。人の気配はまばらだ。だが、移民やひどく歳(とし)を重ねた人々や声を発することのできない人々が、ひっそりと暮らしている。この小説には49人の人間(だけではないが)が登場する。それぞれが主人公となり、小さな物語が語られる。しかし誰が語っているのか、何の目的で語られるのかは、かなり読み進まないとわからない仕掛けである。
正直、とっつきにくい小説だとは思う。どんどん出てくる固有名を我慢しながら読んでいくと、彼らが同じ世界に住んで、わずかだが相互に関係しながら生活していることが了解される。
これはSFではない。ヴォロディーヌはSFとして読まれることを嫌った。「ポスト=エグゾティシズム」という造語で、自分の小説を定義した。異境の物語、ということだろうか。訳者たちの言葉を借りれば、「異質なもの同士がモザイク状に入り組んだ世界」である。
「世界をホログラフィーの感性でもって捉えられる人間」と、作家の古川日出男は、ヴォロディーヌを形容する。まさに正鵠を射た言葉だと思う。
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