書評

『無力な天使たち』(国書刊行会)

  • 2026/10/06
無力な天使たち / アントワーヌ・ヴォロディーヌ
無力な天使たち
  • 著者:アントワーヌ・ヴォロディーヌ
  • 翻訳:門間 広明,山本 純
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(313ページ)
  • 発売日:2012-07-25
  • ISBN-10:4336053642
  • ISBN-13:978-4336053640
内容紹介:
フランスSF界からデビューし、その後ジャンルに納まらず、実験的な作風で知られるヴォロディーヌ。政治性と想像力、リアリズムと幻想性の同居である「ポスト・エキゾティシズム」を唱える作家… もっと読む
フランスSF界からデビューし、その後ジャンルに納まらず、実験的な作風で知られるヴォロディーヌ。政治性と想像力、リアリズムと幻想性の同居である「ポスト・エキゾティシズム」を唱える作家の代表作。襤褸切れから生み出された「救世主」、荒廃した世界で資本主義を復活させたヴィル・シャイドマンが、生みの親である不死の老婆達に語った、四十九の断章からなる、結末を欠いた奇妙な物語。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

異質な49人が入り組む世界

どうやら世界は荒廃してしまった。人の気配はまばらだ。だが、移民やひどく歳(とし)を重ねた人々や声を発することのできない人々が、ひっそりと暮らしている。

この小説には49人の人間(だけではないが)が登場する。それぞれが主人公となり、小さな物語が語られる。しかし誰が語っているのか、何の目的で語られるのかは、かなり読み進まないとわからない仕掛けである。

正直、とっつきにくい小説だとは思う。どんどん出てくる固有名を我慢しながら読んでいくと、彼らが同じ世界に住んで、わずかだが相互に関係しながら生活していることが了解される。

これはSFではない。ヴォロディーヌはSFとして読まれることを嫌った。「ポスト=エグゾティシズム」という造語で、自分の小説を定義した。異境の物語、ということだろうか。訳者たちの言葉を借りれば、「異質なもの同士がモザイク状に入り組んだ世界」である。

「世界をホログラフィーの感性でもって捉えられる人間」と、作家の古川日出男は、ヴォロディーヌを形容する。まさに正鵠を射た言葉だと思う。
無力な天使たち / アントワーヌ・ヴォロディーヌ
無力な天使たち
  • 著者:アントワーヌ・ヴォロディーヌ
  • 翻訳:門間 広明,山本 純
  • 出版社:国書刊行会
  • 装丁:単行本(313ページ)
  • 発売日:2012-07-25
  • ISBN-10:4336053642
  • ISBN-13:978-4336053640
内容紹介:
フランスSF界からデビューし、その後ジャンルに納まらず、実験的な作風で知られるヴォロディーヌ。政治性と想像力、リアリズムと幻想性の同居である「ポスト・エキゾティシズム」を唱える作家… もっと読む
フランスSF界からデビューし、その後ジャンルに納まらず、実験的な作風で知られるヴォロディーヌ。政治性と想像力、リアリズムと幻想性の同居である「ポスト・エキゾティシズム」を唱える作家の代表作。襤褸切れから生み出された「救世主」、荒廃した世界で資本主義を復活させたヴィル・シャイドマンが、生みの親である不死の老婆達に語った、四十九の断章からなる、結末を欠いた奇妙な物語。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2012年09月19日

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