コラム
池内 紀「2018 この3冊」|小堀鷗一郎『死を生きた人びと』(みすず書房)、B・ポムゼルほか『ゲッベルスと私』(紀伊國屋書店)、ドリアン助川『線量計と奥の細道』(幻戯書房)
2018 この3冊
(1)『死を生きた人びと』小堀鷗一郎著(みすず書房)
(2)『ゲッベルスと私 ナチ宣伝相秘書の独白』B・ポムゼルほか著、森内薫ほか訳(紀伊國屋書店)
(3)『線量計と奥の細道』ドリアン助川著(幻戯書房)
(1)百年寿命がいわれる社会にあって、いかにして死ぬかは大問題だ。訪問診療医が、死をみとった人々から42の事例を語っている。人生の最後を自分の責任でどう生きたか。それがどう死ぬかを導いてくる。不安な未知への旅立ちを、やさしく、とともに厳しく見守り、明晰(めいせき)に書きつづった。
(2)ゲッベルスはナチス・ドイツの宣伝相として国民の煽動(せんどう)に力を振るった。最期の三年間、秘書をつとめた女性が回想として証言した驚くべき記録。問う方も答える方も高齢を免罪符としなかった。個人主義の強靭(きょうじん)さを思い知らされた。
(3)東日本大震災後、時の経過のなかで忘却が起きた。復興、除染、帰還が声高にいわれ、「美しい日本」の甦(よみがえ)りがうたわれ、いきつくところがオリンピックという「仮想繁栄」。お守りにした線量計が容赦なく公的ウソを暴いていく。