コラム

山崎正和「2018 この3冊」|内田洋一『風の演劇 評伝別役実』(白水社)、御厨貴『天皇の近代』(千倉書房)、三浦篤『エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命』(KADOKAWA)

  • 2019/01/18

2018 この3冊

(1)『風の演劇 評伝別役実』内田洋一著(白水社)

(2)『天皇の近代 明治150年・平成30年』御厨貴編著(千倉書房)

(3)『エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命』三浦篤著(角川選書)


 (1)一九七〇年代から九〇年代、日本近代演劇が疾風怒濤(どとう)の渦中にあるなかで、前衛劇の冒険を先導しつつ、なお抒情(じょじょう)的というべき美しいせりふを固守した別役実。著者はその個別作品を的確に解説しながら、同時に時代史を浮き彫りにする練達の技を見せた。『風の演劇』という表題も絶妙。(2)御厨、井上章一ら老練と、佐藤信らの気鋭が一座を囲み、討論のうえで個別の論文を書いてまとめた。この手数が本に深みを与え、近代天皇史の集大成というべき一冊を生んだ。行幸の旅、生前退位など平成のできごとが、それぞれその歴史的背景のなかで活写されたのが収穫。(3)西洋古典絵画史はマネに終わり、現代絵画史はマネに始まるという新説は、「メタ絵画」の概念の提唱とともにそれこそ革命的だが、練達の文章がその正しさを納得させる。フランス語での出版が切望される世界規模の傑作。

風の演劇:評伝別役実 / 内田 洋一
風の演劇:評伝別役実
  • 著者:内田 洋一
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(358ページ)
  • 発売日:2018-08-23
  • ISBN:4560096503
内容紹介:
日本の演劇を塗り替えた劇作家の半生 日本のベケットとも称賛され、はじめてわが国の不条理演劇を確立、発展させてきた偉大な劇作家の半生を、日本経済新聞編集委員である著者が、7年間にわたるロングインタビューや周辺取材をもとに、畏敬の念を込めて書き下ろした力作評伝。 別役実は満洲で生ま… もっと読む
日本の演劇を塗り替えた劇作家の半生
 日本のベケットとも称賛され、はじめてわが国の不条理演劇を確立、発展させてきた偉大な劇作家の半生を、日本経済新聞編集委員である著者が、7年間にわたるロングインタビューや周辺取材をもとに、畏敬の念を込めて書き下ろした力作評伝。
 別役実は満洲で生まれ、敗戦とともに実家のある高知へと引き揚げてきた。別役作品の多くに登場する電信柱とベンチ、そこに吹く風は、少年時代の原風景といってもいい。
 評伝の魅力の一つが縁戚関係を辿ることにあるという点では、別役家と寺田寅彦や安岡章太郎が遠縁にあたるのも、文学好きには興味深いところ。
 父を満洲で失った家族はその後、母方の実家を頼って静岡県清水市に移住。小学校の1年下には、のちに早稲田小劇場をともに創立する演出家の鈴木忠志がいたが、二人に面識はなかったという。
 家族の移動はさらに続き、長野を経て東京へ。別役実は大学時代に演劇の魅力に開眼、以後孤高の道を歩み続けてきた。著者は豊富なエピソードを紹介しながら、演劇のみならず、童話や歌詞、エッセイなども含め、別役実の全身像に迫る。付録の全作品解説は、貴重な資料。

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天皇の近代―明治150年・平成30年 / 御厨 貴
天皇の近代―明治150年・平成30年
  • 著者:御厨 貴
  • 出版社:千倉書房
  • 装丁:単行本(360ページ)
  • 発売日:2018-09-30
  • ISBN:4805111593
内容紹介:
明治元年から150年、平成の終わりに近代の天皇を考える。

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エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命 / 三浦 篤
エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命
  • 著者:三浦 篤
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:単行本(324ページ)
  • 発売日:2018-10-19
  • ISBN:4047035815
内容紹介:
芸術のルールを根本から変えた過激な画家。マネを起点に描く西洋絵画史

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2018年12月16日

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