コラム
山崎正和「2018 この3冊」|内田洋一『風の演劇 評伝別役実』(白水社)、御厨貴『天皇の近代』(千倉書房)、三浦篤『エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命』(KADOKAWA)
2018 この3冊
(1)『風の演劇 評伝別役実』内田洋一著(白水社)
(2)『天皇の近代 明治150年・平成30年』御厨貴編著(千倉書房)
(3)『エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命』三浦篤著(角川選書)
(1)一九七〇年代から九〇年代、日本近代演劇が疾風怒濤(どとう)の渦中にあるなかで、前衛劇の冒険を先導しつつ、なお抒情(じょじょう)的というべき美しいせりふを固守した別役実。著者はその個別作品を的確に解説しながら、同時に時代史を浮き彫りにする練達の技を見せた。『風の演劇』という表題も絶妙。(2)御厨、井上章一ら老練と、佐藤信らの気鋭が一座を囲み、討論のうえで個別の論文を書いてまとめた。この手数が本に深みを与え、近代天皇史の集大成というべき一冊を生んだ。行幸の旅、生前退位など平成のできごとが、それぞれその歴史的背景のなかで活写されたのが収穫。(3)西洋古典絵画史はマネに終わり、現代絵画史はマネに始まるという新説は、「メタ絵画」の概念の提唱とともにそれこそ革命的だが、練達の文章がその正しさを納得させる。フランス語での出版が切望される世界規模の傑作。
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