書評
張競「2024年 この3冊」毎日新聞|辻原登『陥穽 陸奥宗光の青春』 (日本経済新聞出版)、三浦篤『大人のための印象派講座』(新潮社)、川端美季『風呂と愛国』(NHK出版)
2024年「この3冊」
<1>『陥穽 陸奥宗光の青春』 辻原登著(日本経済新聞出版)
<2>『大人のための印象派講座』三浦篤著(新潮社)
<3>『風呂と愛国』川端美季著(NHK出版)
<1>は日本外交の父といわれる陸奥宗光の前半生を描いた歴史小説。人物造形は綿密な史料調査に基づいており、波瀾万丈な物語展開はまるで映画を見るような感動を与えてくれる。虚構の時空間において、近代の歴史人物をどう描くべきか、みごとな手本を示した。
印象派についての書籍が夥しく刊行されるなか、<2>はこの芸術運動を理解する上で、独特な視点を提供している。それぞれの画家の家庭背景、女性関係、政治とのかかわり、さらには画商の営業戦略など、これまで知られていない事実が多く披露されている。
<3>は地道な史料調査と丁寧な文献解読を通して、「入浴が好きな日本人」というイメージが形成される過程を解明し、社会的通念が文化の自己表象として手際よく読み解かれている。
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