政治の舞台裏に通じた同窓の学者と記者の対談だから、面白くないわけがない。菅義偉首相の「行動パターンは中小企業の経営者」という指摘にゾクッとする。空理空論に付き合っても得にならないから、現場の生の情報を大事にしているらしい。無思想を恥だと思わず、目の前にある何かと取り組む現実主義が徹底しているという。だから、無派閥でいるのがいいし、それが怖くもない。
戦前戦後の政治家と比べた場合、なんと高橋是清に似ているというから驚きである。若いころは塗炭の苦しみを味わい、アメリカで奴隷まがい、ペルーの鉱山ではだまされた経験もある。日露戦争後は、日銀総裁になり、大蔵大臣として見事だった。
やがて総理大臣、政友会総裁になったが、これはまったくだめで半年で内閣総辞職。その後、大蔵大臣になり、二・二六事件で殺された。
高橋は実務の力量では卓越していても、政治はこなせず、首相には適任ではなかったという。これらの点で似ており、現在の菅首相は驚くような才能があっても、どこか総理には向いていないかもしれないのだ。
生々しい政治の現実に納得するばかり!コロナ禍の無思想の行方は気になるが。