書評

『日本政治の構想』(日経BPマーケティング(日本経済新聞出版))

  • 2024/07/22
日本政治の構想 / 田中 直毅
日本政治の構想
  • 著者:田中 直毅
  • 出版社:日経BPマーケティング(日本経済新聞出版)
  • 装丁:単行本(474ページ)
  • 発売日:1994-03-01
  • ISBN-10:4532142679
  • ISBN-13:978-4532142674
内容紹介:
55年体制成立の頃は思いもつかない変化の潮流の中にいる日本。過渡的政権に押し寄せる、積み残された諸問題…自己統治、権限の再配置、グローバル・ポリティックス。日本政治の歴史的変容を展望する著者会心の作。

マクロな視点で未来へ座標軸

日本の政治は本当に変わりつつあるのか。そうだとしたら望ましい方向に変わっているのか。そもそも望ましい変わり方とは何なのか。八か月を経て細川政権の退陣が早くも決定した。国民皆が今一番知りたいのは、日々移ろう政局についての断片的な情報や、権力闘争に関するわけ知り顔の解説ではない。個々の政治事象をこえたマクロ的な政治構造を浮かび上がらせ、歴史的なものの見方と未来への構想とを大胆に架橋するダイナミックな議論をこそ渇望しているのだ。

本書は、こうした期待にかなりの程度応えてくれるだろう。五五年体制の行きづまりを歴史的に検証した第一部、日本政治を変える要素を明らかにした第二部、日本政治の行く末に対し新たな座標軸を提示した第三部。いずれを開いても歯切れのよい会話体で書かれているので、まことにとりつきやすい。

第一部の議論の中では、田中角栄以来の自民党の実技のあり方を「派閥文化」としてまとめたセンス、それに金権腐敗の排除という大義と日本政治に争点化能力を賦与(ふよ)するという命題とが、「責任政党」の「責任派閥」の中の「責任政治家」からしか芽生えなかったというパラドクスを指摘した洞察力はさすがだ。続く第二部で、政治の領域の拡大と大きな政府からの「解放」との緊張関係の中に、著者は「自己統治」の課題の今日性を見出す。その際国会活性化の文脈を通じて、政党の争点化能力の形成を重視しているのがよくわかる。

第三部の目玉とも言うべき「自由」と「民主」というタテ軸と「進歩」と「保守」というヨコ軸とで仕切られる政治空間の提唱は、個人や集団など各アクターの位置づけを含めて、今後論議をよぶことになろう。最後に「自由」と「進歩」の軸の強化を望む著者に対して、それを可能とする政治家のリーダーシップのあり方について、具体的に論じてもらいたかった。もっともそれは、次なる課題かもしれないが。
日本政治の構想 / 田中 直毅
日本政治の構想
  • 著者:田中 直毅
  • 出版社:日経BPマーケティング(日本経済新聞出版)
  • 装丁:単行本(474ページ)
  • 発売日:1994-03-01
  • ISBN-10:4532142679
  • ISBN-13:978-4532142674
内容紹介:
55年体制成立の頃は思いもつかない変化の潮流の中にいる日本。過渡的政権に押し寄せる、積み残された諸問題…自己統治、権限の再配置、グローバル・ポリティックス。日本政治の歴史的変容を展望する著者会心の作。

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初出メディア

読売新聞

読売新聞 1994年4月12日

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