書評

『宮廷政治 江戸城における細川家の生き残り戦略』(KADOKAWA)

  • 2024/09/02
宮廷政治 江戸城における細川家の生き残り戦略 / 山本 博文
宮廷政治 江戸城における細川家の生き残り戦略
  • 著者:山本 博文
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:新書(384ページ)
  • 発売日:2021-09-10
  • ISBN-10:4040823907
  • ISBN-13:978-4040823904
内容紹介:
膨大な書状には、将軍を取り巻く人々の思惑が、克明に記録されていた!大名親子の間で交わされた膨大な書状が、熊本藩・細川家に残されていた。そこには、江戸幕府の体制が確立していく過程と… もっと読む
膨大な書状には、将軍を取り巻く人々の思惑が、克明に記録されていた!

大名親子の間で交わされた膨大な書状が、熊本藩・細川家に残されていた。そこには、江戸幕府の体制が確立していく過程と、将軍を取り巻く人々の様々な思惑がリアルタイムに記録されていた!
関ヶ原、大坂の陣の乱世から、将軍家による改易の嵐に島原の乱まで。細川親子がいかにして絶対君主の下で大大名となったのか。細川父子が交わした2,904通の書状から、外様大名による情報合戦の内実が明らかとなる。江戸初期の動乱と変革を知るための必読書が復刊!
※本書は、1993年に読売新聞社より刊行され、1996年に講談社文庫、2004年に講談社学術文庫で刊行された『江戸城の宮廷政治』を改題の上、復刊したものです。底本には講談社学術文庫版第一刷を使用しました。復刊にあたり、著作権継承者の御了解を得て、改題の他、難読漢字に読み仮名を付すなどの表記上の整理を行いました。

細川家父子、書状で密な連携

三代家光に至る創生期の江戸幕府において大名たちはいかにすれば、とりつぶされることなく生き残りえたのか。本書は、「外様大名の典型的な優等生」と自他共に認めていた熊本藩の細川忠利と、父忠興との間の三千通近くに及ぶ往復書状を中心に、全部で一万通をこえる膨大な書状群を基に、この問題への一つの回答を示す。

そこには、おそらく戦国乱世の時代には想像だにしなかった社会が出現しつつあった。一方で意思決定過程の制度化、すなわち将軍の権力の確立を背景に、組織や制度を通じてすべてのコトが処理されていく世界が確立する。他方でこの実務の世界と対置される形で、疑心と悪意と嫉妬心とに満ち満ちた噂話の世界も顕在化する。これを著者は宮廷社会と名づけた。

ではこの宮廷社会の中で、細川家はどの辺に位置していたのか。有力者との縁組を進め、おもねると言われんばかりに幕府に恭順の意を表明した黒田家。家臣との縁組を進め、江戸での交際を好まず幕府への自主独立の姿勢を貫いた島津家。実はおよそ対照的な両家の中間に細川家は位置づけられる。いわゆる幕閣の有力者との縁組は避けながらも、江戸人脈を増やし、たえず情報収集に目くばりして自家の安全をはかる用意周到さが、細川家の真骨頂であった。

かくて細心の注意を払いバランス感覚に富んだ優等生の忠利に対してさえ、宮廷社会の噂は容赦なかった。あまりに細々(こまごま)と幕府に報告しその指示を迎ぐ姿勢を、人は逆に不見識とみなしたからである。やはり宮廷社会は過ぎたるは及ばざるにしかずという世界なのであった。優等生たることが、そしられおとしめられる立派な理由になる。何とまあ底意地の悪い世界であろうか。

しかしこれを乗りきれたのは、何と言っても父と子の協力の賜物(たまもの)に他ならない。島原の乱の折、功をほこる忠利をきびしくたしなめた父忠興の態度に、それはよく現れている。

【旧版】
江戸城の宮廷政治: 熊本藩細川忠興・忠利父子の往復書状 / 山本 博文
江戸城の宮廷政治: 熊本藩細川忠興・忠利父子の往復書状
  • 著者:山本 博文
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(382ページ)
  • 発売日:1996-09-01
  • ISBN-10:4062633361
  • ISBN-13:978-4062633369

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宮廷政治 江戸城における細川家の生き残り戦略 / 山本 博文
宮廷政治 江戸城における細川家の生き残り戦略
  • 著者:山本 博文
  • 出版社:KADOKAWA
  • 装丁:新書(384ページ)
  • 発売日:2021-09-10
  • ISBN-10:4040823907
  • ISBN-13:978-4040823904
内容紹介:
膨大な書状には、将軍を取り巻く人々の思惑が、克明に記録されていた!大名親子の間で交わされた膨大な書状が、熊本藩・細川家に残されていた。そこには、江戸幕府の体制が確立していく過程と… もっと読む
膨大な書状には、将軍を取り巻く人々の思惑が、克明に記録されていた!

大名親子の間で交わされた膨大な書状が、熊本藩・細川家に残されていた。そこには、江戸幕府の体制が確立していく過程と、将軍を取り巻く人々の様々な思惑がリアルタイムに記録されていた!
関ヶ原、大坂の陣の乱世から、将軍家による改易の嵐に島原の乱まで。細川親子がいかにして絶対君主の下で大大名となったのか。細川父子が交わした2,904通の書状から、外様大名による情報合戦の内実が明らかとなる。江戸初期の動乱と変革を知るための必読書が復刊!
※本書は、1993年に読売新聞社より刊行され、1996年に講談社文庫、2004年に講談社学術文庫で刊行された『江戸城の宮廷政治』を改題の上、復刊したものです。底本には講談社学術文庫版第一刷を使用しました。復刊にあたり、著作権継承者の御了解を得て、改題の他、難読漢字に読み仮名を付すなどの表記上の整理を行いました。

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初出メディア

読売新聞

読売新聞 1993年7月20日

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