『長い物語のためのいくつかの短いお話』(白水社)
堀江 敏幸
カフェレストランの楽団で、毎晩同じような演奏を繰り返している男が、ふと出会った娼婦を必死に探す「チェロ奏者」、人生を振り返り、自分を処罰すべく自殺しようとした老人の結末(「ある受刑者」)、通信社で働く〈わたし〉が、短期間同僚だった男をふと見かけ、後を付ける「サンドイッチマン」、パリ市民蜂起の日、レジスタンス活動家らしき男の指令を受けて「オテル・マティニョン」に自転車で向かった若者の話(「マティニョン」)。
さらに、著者がジャーナリスト時代に取材したという、忘れられた「ヴァンプ女優」ジーナ・マネスの告白もあれば、「夫に付き添って」や「記憶喪失」など、老いを主題とするやるせないショートショートも。最後に、〈彼〉と初恋相手の美少女との交わりを、両者の人生の軌跡とともに描く、もっとも自伝的な1篇「長い物語のための短いお話」ほか、思わず泣き笑いしてしまうような心に沁み入る全13篇を収録。人生の旨味と苦味と可笑しみを洒脱な筆致で描く、著者92歳の到達点!
[目次]
ブロッケン現象
ある受刑者
マティニョン
チェロ奏者
動物園としての世界
レオノール
ヴァンプ女優、猛獣使いの女、そして司祭のメイド
サンドイッチマン
裏切り
夫に付き添って
墓参り
記憶喪失
長い物語のための短いお話
訳者あとがき
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